気が早いかもしれないが、来年の春闘で3年連続の賃上げができるかどうかは、「生産性の低い分野から高い分野への労働移動」が進むかどうかに懸かっていよう。こういうと美しく聞こえるけれども、ありていに言ってしまえば、「競争力のない会社から、もっと条件のいい会社に働き手が転職する」ことを意味する。
労働移動が進むことは、資源の最適配分につながる。ゆえに日本経済全体の成長力も向上することになる。他方では、中小企業の人手不足倒産や、地方経済の疲弊なども考えられる。だからと言って、ここで生産性の低い企業に対して政府が手を差し伸べたりすると、せっかくのモメンタムが失われてしまう。ゆえに立場によっては、現状は「物価と賃金の悪循環」に見えているかもしれない。
あらためてなぜ今、物価と賃金の変化が始まったかといえば、ひとつには海外発の輸入インフレが到来したからだ。日銀が言うところの「第一の力」であり、いわば他律的な物価上昇である。これらはすでに一巡しつつあり、前年比で見た「モノ」価格の上昇幅は小さくなりつつある。
代わりに重要になってきたのが「第二の力」、つまり国内発の自律的な物価上昇である。実際に「サービス」価格は前年比2%前後で推移しており、それをもたらしているのが賃金の上昇ということになる。
それではなぜ賃上げが可能になったのか。背景にあるのは、いよいよこの国の人口減少が加速してきたことであろう。昨年の人口減少は83.2万人、その前の2022年は79.8万人。年間で福井県(76.7万人)を超える人口が減っている。ちなみに福井県より小さな県は4つもある(徳島県、高知県、島根県、鳥取県)。近い将来に、この状況が反転することは考えにくい。企業としては、「賃上げをしなければ、いよいよ採用ができなくなる」という切羽詰まった感覚があるのだろう。
物価と賃金の好循環は来年の「3年目」が勝負
こうしてみると、「物価と賃金の好循環」はこれから先の3年目が勝負となる。かならずしも「未来はバラ色」ではなさそうだが、かといって今さら「デフレ均衡」に後戻りできるわけでもない。
とりあえず「変化は買い」ということで株価は上げているけれども、おのおの方、将来の変化への覚悟はありや、ということになる(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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