なぜ「厚底シューズ」を見ると気分が悪くなるのか 日本企業が競争で勝てなかった根本原因は何か

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筆者は「毎朝ジョギングの人々を見るのが苦痛だ」という。それはなぜなのか(写真:Getty Images)

朝、まだ桜が咲いていない公園に、ジョギングの人々が湧き出てくるより前、日の出前の時間に散歩に出かけた。

花見客によって汚染された公園も嫌だが、毎朝のジョギングの人々を見るのも苦痛だ。なぜなら、最近は彼らのほとんどが厚底シューズを履いているからだ。あれを見ていると、散歩で得られ始めた穏やかな心が失われる。

厚底シューズをめぐる2つの「問題」

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら

なぜなら、あれは価格は高いのに耐久性は極端に低く、さらにほとんどの人にとって身体に悪く、レースの記録も悪くなるからだ。ああ、すぐさま「そのシューズを脱ぎなさい」と言ってあげたい。その衝動を抑えるのに七転八倒して、気分と体調を悪くして、私は家路につくことになる。それで、人気(ひとけ)のない夜明け前の散歩をしているのだ。

問題その1。この手のシューズはプロ専用である。

そもそも、ランニングシューズにカーボンを入れて、その衝撃を緩和するために分厚く超軽量のクッション材を追加した“アツゾコ”(厚底)シューズを開発したナイキの意図は何か。それは、ケニアの英雄であるエリウド・キプチョゲ選手が人類初の「マラソン2時間切り」を実現するためだった。

要は、キプチョゲ専用シューズだったのである。その後、アフリカ以外のアスリートにも提供し、日本では大迫傑選手が早くからユーザーとして開発にアドバイスをしていた。例えば、初期にフィット感を高めるためのアッパーの素材が雨中のレースだと重くなるので、改善するよう指摘したことは有名である。メーカーは彼らの協力を得て、超ハイレベルアスリート専用シューズを生み出したのである。

車でいえば、F1用のレーシングカーを公道で素人が運転することは危険すぎるように、カーボンプレート厚底シューズはアマチュアランナーにとってはリスク以外の何物でもない。記録上のメリットも、1キロ3分ペース前後で走るのであれば大きいが、遅くなるにつれてデメリットがメリットを上回るようになるから、要は、ほとんどの人にとってはよいことがないシューズなのだ。

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