4月10日韓国総選挙・現政権が勝ってもいばらの道 尹錫悦政権の命運かかる選挙戦がスタート

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医師団体側の徹底抗戦の構えに変化はなく、現場の医師は職場を離脱。医学部生は授業をボイコットする中、時間が経つにつれて生死がかかわるような深刻な治療から定期検診にいたるまで、十分な処置が受けられない実害が出始め、市民らの不満が高まってきた。

医師団体ではさらに、トップに医学部生の定員増ではなく、定員減を主張する「最強硬派」が就任。尹大統領は医学部の教授らに対話を呼びかけるなどしているが、基本的には強硬一辺倒の姿勢を改める気配はない。

患者側をとりまく切実な状況は、明確な打開策を示せない政府・与党側への批判を高め、潮目が変わりつつある。

スター政治家が登場したものの…

そうしているうちに、韓国軍兵士の殉職事件に関連し、職権乱用の疑いで捜査を受けていた前国防相が、出国禁止措置を受けていたにもかかわらず、政権がそれを解除させ、駐オーストラリア大使に赴任させたことも反発を招いた。

韓国政界では、自分に甘く他人には厳しいという姿勢を「ネロナンブル」と言って揶揄(やゆ)される。韓国語で「自分がやればロマンスだが、他人がするのは不倫」という言葉を短縮した造語で、朴槿恵政権や文在寅政権の身勝手ぶりを指摘する際に使われた。

検事出身の尹大統領はこれまでやたらと「法とルールの順守」を強調してきたが、批判勢力や少数派の自由を制約するかのようなケースが目立ってきており、前国防相に対する特別な扱いも象徴的な出来事ととらえられている。

前国防相はオーストラリアに赴任直後、すぐにとんぼ返りで帰国し、対し任命からわずか25日でついに辞意を表明するハメになった。それは、事実上の「国民の力」代表である韓東勲・党非常対策委員長が求めた結果だとされる。

検事出身の韓東勲氏は、尹大統領から政権の初代法相に抜擢された経緯などから、大統領のアバター(分身)などと指摘されてきた。

一方で、国会答弁などで野党議員の厳しい質問に舌鋒鋭く反論したり、わかりやすく説明したりする姿勢から、早くも次期大統領にふさわしい保守論客と注目される。

その韓東勲氏が、尹大統領の判断を覆す形で前国防相を呼び返したことで、その存在感と発言力の大きさを改めて印象づけることになった。

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