4月10日韓国総選挙・現政権が勝ってもいばらの道 尹錫悦政権の命運かかる選挙戦がスタート
歴代政権は何度も医療界の改革を試みてきたが、そのたびに強い抵抗を受け、事実上、挫折してきた。だが尹政権が免許停止という強権を発動し、改革に強い意欲をみせたことが評価され、世論的には既得権益の象徴のような存在だった医師側の利己的な対応への反発が強まった。
医療改革の前に、与党内で公認選びをめぐる整理が順調に進んだことも大きかった。やはり既得権益を独占しているといった批判から、とかく多選議員が敬遠される韓国社会にあって、保守地盤でもある南東部・釜山周辺選出のベテラン議員をいかに交代させるかが与党執行部にとって大きな悩みだった。
現職議員の4割が不出馬変化
韓国では現役の議員を新顔に代えたり、別の選挙区に送り込んだりすることを、田んぼの水の入れ替えにたとえて「ムルガリ」と呼ぶ。ムルガリが進めば進むほど、多く得票する傾向がある。ちなみに今回の総選挙には、現職国会議員の約4割が立候補を見送った。
そのような中、2023年12月、尹大統領の最側近で釜山を地盤とする有力国会議員が「私を踏み越えて総選挙で勝利し、尹錫悦政権を成功に導いてほしい」と述べて、早々と不出馬を表明。他の重鎮たちに勝手な行動をさせない流れを作り、公認選びの負担を減じた。
現有で過半数の議席を占める巨大野党「共に民主党」が公認選びで大混乱したことも、政府・与党の追い風になった。かつての自治体首長時代の背任や収賄の罪で在宅起訴されたまま党代表を務める李在明氏が剛腕をふるう形で、自身と距離を置く人物にことごとく公認を与えず、離党や新党に移る現職が相次いだ。
李在明氏は2022年の大統領選で、ほんのわずかな差で尹大統領に敗れた。この時は尹氏を嫌う無党派層の票をかなり得たとされるが、李氏に批判的な野党議員の1人は「公認選びをめぐる騒動に嫌気をさした無党派層が離れ始めている」と懸念を口にする。
これらの動きを受け、順風満帆にみえた与党側だが、3月中旬あたりから徐々に風向きが変化してきた。
その原因の1つは、これまで政権支持率を押し上げる主要因ともされた医療改革の反動である。
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