日が暮れて、宮が帰ろうとすると心細く思うのか泣き出し、宮もついもらい泣きをしてしまう。
「そんなに思い詰めてはいけないよ。今日明日のうちにお迎えにきますからね」と何度もなだめて、帰っていった。
父宮が帰ってしまい、姫君は悲しみの紛らわしようもなく泣き続ける。この先自分がどうなるのかなどと考えているわけではない。ただずっとかたときも離れずにいっしょだった尼君が亡くなってしまったと思うと悲しくてたまらず、幼心にも胸がふさがれる思いである。以前のように遊ぶこともなくなって、昼はまだなんとか気も紛らわせているが、夕暮れになるとひどくふさぎこんでしまう。これでは、これからどのように過ごしていけばいいのかと、なぐさめることもできずに少納言もいっしょに泣いた。
どう考えてもまるで不釣り合い
光君はその夕方、姫君の邸に惟光(これみつ)を使いに出した。
「私が参上すべきなのですが、宮中からお召しがありました。姫君のおいたわしいご様子を拝見しまして、どうにも気に掛かったものですから」と、惟光に伝えさせ、宿直人も遣わせた。
「まったく情けないことです。ご冗談だったにしてもご結婚というのでしたら、ご縁組の最初には三夜は通ってくださるはずが、こんな冷たいお仕打ちをなさるとは。父宮さまがこのことをお耳にされましたら、おそばの者たちの不行き届きとお叱りを受けましょう。けっしてけっして、何かのはずみにも源氏の君のことをお口にはされませんよう」
と少納言は言い聞かせるが、姫君がなんとも思っていないようなのは張り合いのないことである。少納言は惟光相手にあれこれと悲しい話をしてから、言った。
「これから先のいつか、源氏の君とのご宿縁も逃れがたいものになっていくのかもしれません。けれど今は、どう考えてもまるで不釣り合いなことと思いますのに、源氏の君の不思議なほどのご執心と、そのお申し出も、いったいどんなお考えがあってのことなのか見当もつかず、思い悩んでおります。今日も父宮さまがいらっしゃって、『心配のないように守ってほしい。軽率な扱いをしてくれるな』と仰せになりました。私もそれでたいへん気が重くなりまして、あのような酔狂なお振る舞いもあらためて気に掛かるのでございます」
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