会社人生で知っておくべき「人間の本質」 中国古典に答えがあった!

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しかし、その後がいけません。やがて仲たがいが生じ、会長派、社長派に分かれて骨肉の争いを繰り広げ、その揚げ句、お互いにののしり合うようになる例もないではありません。見ていて、「何もそうまでしなくても」と、やりきれなくなることがあります。

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そういう人たちは、事業を成功させたくらいですから、それなりの経営手腕はあったのでしょう。しかし、そんな騒ぎを起こすところを見ると、人間学についてはあまりにも未熟だと言わざるをえません。

これについて、見事だと思わせられるのは、范蠡(はんれい)という人の処世です。范蠡は、今から2500年ほど前、越王勾践(えつおうこうせん)に仕えた家臣です。主君の勾践と力を合わせて国力の増大に努め、苦労の末、ついに宿敵の呉王夫を攻め滅ぼし、その功績によって大将軍に任命されます。

ところが、位人臣(くらいじんしん)を極めたそのとき、ある決断をします。「得意の絶頂にある君主の下にとどまっていたのでは、わが身が危ない。第一、勾践は、苦労を分かち合うことはできても、楽しみを分かち合うことのできない人物だ」

こう言って、大将軍の位を惜しげもなく投げ捨てて勾践の下を去り、経済界に転身して、そこでも見事な成功を収めたといわれます。そんな范蠡を、中国人は進退を誤らなかった「明哲保身(めいてつほしん)」の人とたたえてきました。

「苦労は共にできても、楽しみは共にできない」

范蠡はなぜ勾践の下を去ったのか。『菜根譚』によれば、「苦労は共にできても、楽しみは共にできない」のは、何も勾践だけではなく、人間とはそういうものなのだというのです。

むろん、最後までうまくいく場合もあります。しかし、それはよほど立派な人間同士の場合であって、一般には期待できないと思います。人間とはそういうものだと認識できれば、後は別れ方の問題です。いずれ別れなければならないものなら、なるべく円満に、今後の健闘を祝し合って別れたいものです。

厳しいだけの人間ではダメ

「学ぶ者は段の兢業の心思あり、また段の瀟洒(しょうしゃ)の趣味あるを要す。若し一味に斂束清苦ならば、これ秋殺ありて春生なきなり。何を以ってか万物を発育せん」

 

これは、「自分を磨こうとするなら、まず厳しく自分の行動をチェックしなければならない。しかし一面では、物事にこだわらない洒脱な精神も必要である。ひたすらわが身を苦しめるだけのことなら、秋の冷たさはあっても春の暖かさに欠けている。どうして万物を育むことができようか」という意味です。

言うまでもなく、これは人物のありようについて語った言葉です。ちなみに「学者」とは、現代の学者とは異なり、ここでは道を修めて自分を磨こうとする者を指しています。

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