そうなれば、日本の自動車生産量が減って輸出も減ったままになるかもしれない。しかし、前述のように、少なくとも国際収支に関するかぎり、所得収支が賄ってくれるから心配はないのである。
もちろん、土日を休業にしたままでは、従業員の給与は減ってしまう。しかしトヨタ全体としては金融事業で収益があり、しかも、それこそが今やトヨタの主要収益なのだから、土日を休業にしたまま従業員の給与もそのままにすることは不可能ではないだろう。
以上で述べたことは、決して冗談で言っているのではない。真剣に考えるべき問題である。これまでの常識にとらわれるから、「水木を休業にすれば土日は働く」ということになる。しかし、日本経済が置かれた状況をよくよく考えれば、「水木を休業にしたまま」という考えは、ありうるものなのだ。そして、そのほうが、経済全体の立場から見て望ましい結果をもたらす可能性が十分にあるのである。
産業政策は誰のために行われているのか?
トヨタはしばしば日産自動車と比較される。日産はトヨタより海外展開を進めているので、経済危機後の状況はトヨタよりよいといわれる。そうした面があることは事実だ。特に中国における事業展開はトヨタより進んでいる。
しかし、それは販売台数や生産台数という量的な側面を見た場合の評価である。日産が中国事業の展開によって利益を増加させているかといえば、必ずしもそうではない。日本や欧米での事業の利益が落ち込んでいるので、中国での利益の比重が高まっているにすぎない。中国にシフトしたことによって、従来の先進国中心路線に比べて利益が増えているわけではない。むしろ、利益率は従来より低下している。