5月11日に発表されたトヨタ自動車の2011年3月期決算は、いくつかの点で刮目(かつもく)すべき内容を含んでいた。
第1は、設備投資の地域別動向である。前年度に比べて日本国内での投資は減少しているのに対して、海外投資は約2倍に増えている。前回、経済産業省の資料で海外投資が激増していることを見たが、それより顕著な形で海外シフトが進んでいることがわかる。
第2は、営業利益の大部分が自動車事業ではなく、金融事業(自動車ローンやリースを中心とした事業)によってもたらされていることだ。すなわち、11年3月期営業利益4683億円のうち、自動車事業によるのは860億円にすぎず、金融事業が3583億円と全営業収益の77%を占めている。トヨタはいつの間にか金融業に変身していたのである(表)。
トヨタの金融事業は13兆円を超す資産を保有しており、これまでも「トヨタ銀行」ということがいわれていた。09年3月期には連結営業赤字になったものの、10年3月期においては、自動車事業が赤字を続ける半面で、金融事業は2469億円の営業利益を生み出していた。しかし09年は経済危機によって対米輸出が大きく落ち込んだ異常な年だったので、こうなるのもやむをえないと考えられたのである。
ところが、11年3月期決算では、エコカー購入支援策や輸出の回復で生産が回復しつつあったにもかかわらず、自動車事業は利益を上げることができていない。これは、トヨタ自動車という企業が、自動車事業を行う会社から金融事業を行う会社に変身していることを意味しているのである。