(第7回)気がついてみればトヨタの本業は金融

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 米ゼネラル・モーターズ(GM)もかつて収益の9割以上を金融事業で上げていた。トヨタが同じ収益構造になっても不思議はない。そして、これは、日本全体の変化と同方向のものだ。04年度以降の毎年度、日本の国際収支において所得収支の黒字は貿易収支の黒字を上回っている。大震災後に日本の貿易収支は赤字に陥ったが、所得収支の巨額の黒字は継続しており、これが経常収支の黒字を維持している。

つまり、日本は「モノを製造して輸出する」という国から、「これまで蓄えた資産の収入で生きる」という国に転換しているのである。トヨタの数字は、それが個別企業の段階でも確かめられるということだ。

注意すべきは、トヨタの11年3月期決算には、東日本大震災の影響はまだ本格的には表れていないことである。震災後の大幅な自動車生産の減少は、むしろ12年3月期決算に対して大きな影響を及ぼすはずだ。そこではトヨタ自動車の金融業化現象は、より明確な形で表れるに違いない。

操業しないほうが利益は増える?

電力不足に対応して輪番操業がなされている。関係する人々はさまざまな努力を強いられていることだろう。そのご苦労には頭を下げざるをえない。しかし、営業利益という観点から考えるかぎり、そうした努力をしても、あまり効果はないといわざるをえないのだ。むしろ、メーカー間で操業日が食い違えばさまざまな非効率が発生することから、利益は減少するだろう。トヨタ自動車のような大企業では、輪番休止に伴うコストはあまり発生しないかもしれない。しかし、トヨタの操業スケジュールに合わせざるをえない下請け企業では在庫の増加など、さまざまなコスト上昇が発生するはずである。

他方で、金融面での利益はそうしたこととはあまり関係せずに今後も発生する。トヨタの本業が金融業なのであれば、今年の夏は水木を休業にしたままで、土日に操業する必要はないともいえる。むしろ、トヨタが土日も休んでくれたほうが、無駄なコストの発生を抑えられるということになるだろう。日本全体の立場から見ても、そうしたほうが土日の電力使用も減るので、望ましいといえるかもしれない。

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