花粉症対策に悩む人に教えたい「舌下免疫療法」 内服は市販薬で十分、点鼻と点眼薬は要注意

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薬では症状がコントロールされない人や眠気が困る人は、舌下免疫療法=経口減感作療法がお勧めだ。花粉症に対する舌下免疫療法はスギ花粉のみ、薬が販売されている。治療方法は国によって少し異なるが、日本での標準的な治療法は、スギ花粉シーズンが終わった5月頃から開始する。

人体は口から摂る物質に対してアレルギー反応が起きにくく、皮膚に擦り込むとアレルギー反応が起きやすい。卵アレルギーの経口減感作治療では、タマゴボーロをごく少量から与え、少しずつ増量していくことでアレルギー反応が起きなくなる。スギ花粉症では、スギのアレルゲンを含んだ錠剤(シダキュア)を用いる。

シダキュアの添付文書によると、症状がよいと感じた人はシダキュア群40.2%対偽薬群15.7%であり、症状が悪いと感じた人はシダキュア群2.0%対偽薬群12.2%と、シダキュアは症状改善に有効であった。治療は3年続けて効果が感じられなければ終了する。有効だった場合、そのまま治療を続ける人が多いが、中止しても2年は効果が持続することがわかっているので、 3年服用したらいったん休んでみて、また症状がひどくなってきたら再開する方法もある。

私自身もスギ花粉症の舌下免疫療法を行い、翌シーズンから症状の改善を自覚した。症状が軽くなればより眠気の少ない弱い薬でも効果が得られるし、白目がブヨブヨにむくむほど目が痒くならずに済む。なお、スギ花粉症の舌下免疫療法を行うと、ヒノキによる花粉症の症状も軽減することが知られている。

舌下免疫療法の料金は?

舌下免疫療法は、スギに対してクラス3以上のアレルギー反応のある人が受けることが可能だ。よって、最初に血液でアレルギー検査をおこなう。過去の検査結果を医療機関に持参するのでもいい。まず1週間、2000単位の錠剤を服用する。初回は医療機関にて服用する。口の中の腫れや痒みなど症状が悪化しなければ、1週間後に5000単位の錠剤に増量する。

副作用は口の中の浮腫、のどへの刺激感、耳や口の中の痒みなどであり、ほとんどが軽症だ。服用を続けられないほどの副作用が出ることは稀であり、抗アレルギー薬を併用することで抑えられる。

シダキュアの3カ月分の薬価は約1万3000円で、そのほか診察料や調剤料がかかり、健康保険3割負担の人では年間3万円ほどの自己負担額となる。

舌下免疫療法は、オンライン講習を受けて登録を済ませた医師のみ処方が可能だ。耳鼻科や皮膚科、アレルギー科、内科など、花粉症の診療を受けられる医療機関で相談してみるといい。シダキュアを販売する鳥居薬品のホームページでは医療機関の検索も可能だ。

自分に合った治療を見つけて、花粉症のつらさから少しでも解放されよう。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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