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いったい「異次元緩和」をする必要はあったのか? 「壮大な実験」の失敗ではっきりしたことは何か

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  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
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確かに、それはメリットに違いがない。だが、あまりにばかばかしくないか。われわれがバカで理解不足だったから、自分たちの認識が間違っていることを知るためだけに、副作用の大きな異常な大規模緩和をした、ということだ。しかし、それでも、誤解を続けるよりはましなので、一応メリットだったと言えるだろう。

期待に働きかけてもインフレ率を動かせない

しかし、本当に総括しなければいけないのは、リフレ派が主張する「マネーが増えればインフレになり、全部解決する」という安直な認識が間違っていただけではなく、まっとうな正統派のマクロ経済学者の認識も間違っていたことがはっきりしたことを日本中のコンセンサスにしなければならないということだ。

すなわち、中央銀行がインフレターゲットにコミット(実現に向けて約束する)すれば、市場参加者(金融市場、実体経済の市場とともに、すべての経済主体も含む)の期待が動き、期待インフレ率が上昇し、それに基づき経済主体が経済活動をすることで、実際のインフレ率も上昇し、ターゲットのインフレ率が達成されるというのは、ただの幻想であったことがはっきりしたのだ。期待は実現しない。

そして、これは当初、日本だけが特殊だと思われていたが、アメリカにおいてもまったく同じで、インフレ率のコントロールに大失敗し、アンカー(投錨)された水準になかなか戻らない。つまり、金融市場はともかく、実体経済においては、経済主体の期待に働きかけるというアプローチはほとんど効果がなく、少なくともインフレ率を、期待に働きかけることによって動かすことはできないことがはっきりしたのだ。

間違いがはっきりしたということでメリットに数えてもいいが、現実にはこの認識をあいまいにしたまま、日本社会はこの異次元緩和という「壮大な実験」の失敗を忘れようとしている。

34年ぶりに日経平均株価がバブル期を超え、証券関係者は「生きているうちにこの日が来るとは思わなかった」と感激して泣きながらクス玉を割り、エコノミストや中央銀行関係者は「日銀の悲願だったインフレ率2%が実現した」と、なぜかインフレを起こすことが悲願で、すべてのことに優先するかのような議論を行い、「日本経済の最大の問題であるデフレが解決した、これでやっと次に進める」などと言っている。

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