いったい「異次元緩和」をする必要はあったのか? 「壮大な実験」の失敗ではっきりしたことは何か

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もちろん、日銀はETFの買い入れは実質的にもう止めていたし、YCCも植田日銀になってから2度の変更で関連はなかった。つまり、YCCの上限金利のメドである1%とは無関係に長期国債の金利が市場で決まっていた、ということがベースにはある。しかし、それにしても、それならば、やっぱりあってもなくても最初から同じだったのではないかという疑問が生じてくる。

そもそも異次元緩和をやる必要はあったのか

問題は2つである。第1に「中央銀行は金融市場との対話が重要だ」というが、それは本当なのか、という問題だ。金融政策を投資家の都合のいいように変更することを強いるような催促相場になったり、過去2年間のように政策変更を食い物にするようなトレーダーが多かったり、という状況においては、そもそも対話というものが成り立つのか。

中央銀行の金融市場への対峙の仕方に関する日本の金融関係者やメディアの常識は間違っていたのではないか。そのような「悪い」トレーダーや投資家に対しては、支配するあるいは相手にしないという考え方で臨まざるをえないのではないか。そして、植田日銀は、丁寧に静かに、しかし本質的には「相手にしない」というアプローチで、今回成功したのではないかということだ。

第2に「そもそも異次元緩和には、出口でもてあそばれるリスクを高めただけで、何のメリットもなかったのではないか」という根本的な疑問だ。

副作用は、国債市場の機能低下、政府財政への規律の低下、民間経済主体へも長期の低金利による規律低下および資源配分の効率性の低下という明らかな弊害がそもそもあるのに、それ以外にも出口リスクという大きな副作用があり、それにもかかわらず、実体経済には効果がゼロだったのはないか。つまり、そもそも異次元緩和をやる必要は最初からなかったのではないか、ということだ。

これが実は当たり前のことではあるが、今回の政策変更において総括をしておかなければいけない最重要のことなのではないか。植田総裁は「それはレビュー待ち」と記者会見で返答したが、待ちきれないので、今回の記事の最後に整理しておこう。

異次元緩和のデメリットは明らかなので、まず、それを並べておこう。

まず、前述したように、国債市場機能低下、財政規律低下、民間経済主体の非効率化がある。これらは、異次元緩和でなくとも、大規模緩和を長期にわたりゼロ金利(マイナス金利あるいはプラスの低金利でも)で行えば生じる、過度の金融緩和の弊害である。

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