こんなに大胆に、一気に「三段跳び」をしてしまったのに、市場はまったく動かなかった。もちろん「事前のリークがあったから」という見方もあるが、そもそもリークされたときも「多少波立った」くらいだった。
なぜ「無風」という「事件」は起きたのか
ほぼ無風。これは、植田日銀の大成功であると同時に「金融市場とは何なんだ?」という疑問が生じる「無風」という「事件」である。金融市場がこの2年騒いできたこと、とくに「黒田(東彦)日銀」の末期、YCCをネタに締め上げ続け、為替で仕掛け続けたのは何だったのか。
それは、金融市場で仕掛けたがる奴らが日銀ネタに飽きてしまったから、なのだ。つまり、日銀ネタで仕掛けるのは賞味期限切れで、盛り上がらないから、誰もついてこない。ついて来なければ、乱高下が起きなければ、仕掛けても儲からない、だからやめてしまったのだ。
むしろ、この1年は日本大ブームで、日本を何かの理由にかこつけて、とにかく「買い」たかったのだ。だから今回も、日本を売るという方向では材料にしづらいから、日本株を暴騰させてみたのだ。
これまた、植田総裁の成果、彼の静かな忍耐強さの勝利ではある。私たちが、植田新総裁に「すぐにでも正常化に進んでほしいのに、何モタモタしてやんでえ、さっさと正常化しちまえ!」と怒鳴っていたのに、まったく静かに時機を待った植田氏の殊勲である。
しかし、である。ということは、投機的トレーダーにおもちゃにされるという問題だけが正常化の障害だったのか?という政策議論上の問題がある。異次元緩和の副作用の1つは「出口戦略が難しくなる」というものだったのだが、その副作用は市場(の悪いやつらに)にもてあそばれるということだけだったのか?という問題である。
すなわち、異次元緩和は実体経済に対しては副作用すらなかったということだ。そして、副作用すらないということは、そもそも実体的な効果はそもそも存在しなかったということだ。
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