サルからヒトへ、古代DNAが明かした人類のルーツ 遺伝子配列の変化をさかのぼると祖先がわかる

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その中の1つがネアンデルタール人と交雑して世界に広がり、一方、交雑していない集団もヨーロッパの集団形成に関与したものと考えられます。いずれにせよ、ネアンデルタール人は間違いなく私たちの隠れた祖先なのです。

ゲノムで解明「ネアンデルタール人の生活」

高い精度でゲノムが解析されたネアンデルタール人は、シベリア西部のデニソワ洞窟とチャギルスカヤ洞窟、クロアチアのヴィンデジャ洞窟から出土した3体。これらに加え、各地で得た複数のデータから集団形成の様子などが明らかになりました。

ネアンデルタール人の集団形成

下の図は、古代ゲノムの解析が行われている主なネアンデルタール人の遺跡です。これらから得たゲノムデータを解析することで、ネアンデルタール人の集団の構造や、分化の様子も再現されるようになりました。

人類の起源
(『図解版 人類の起源』より/絵:代々木アニメーション学院)

例えば、チャギルスカヤ洞窟(8万年前)のネアンデルタール人のゲノムは、地理的に近いデニソワ洞窟(11万年前)より、ヨーロッパのヴィンデジャ洞窟のネアンデルタール人に近く、この事実から彼らは11万~8万年前に西ヨーロッパから東へ移動した集団の子孫であることがわかります。

『ビジネス教養・超速アップデート-図解版 人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』(中央公論新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

東西で異なる婚姻形態が判明!?

ゲノムの解析によって拡散の様子も明らかに。

ネアンデルタール人の共通の祖先から、まずデニソワ洞窟の集団が分離し、さらにチャギルスカヤ洞窟の系統が東へ移動、その後ヨーロッパに残った系統からヴィンデジャ洞窟や他の西ヨーロッパの系統が生まれたと考えられています。

また、東のグループは60人以下の少人数での婚姻(近親交配)をしていたことが判明。西の集団には見られないため、東の集団は人数が減り、近親婚を繰り返したことで消滅したと考えられています。

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篠田 謙一 国立科学博物館長

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しのだ けんいち / Kenichi Shinoda

1955年生まれ。京都大学理学部卒業。博士(医学)。佐賀医科大学助教授を経て、現在、国立科学博物館長。専門は分子人類学。本書の親本にあたる『人類の起源』(中公新書)は新書大賞2023第2位となったベストセラー。他の著書に『DNAで語る日本人起源論』『江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA』(ともに岩波書店)、『新版 日本人になった祖先たち――DNAが解明する多元的構造』(NHK出版)、編著に『化石とゲノムで探る――人類の起源と拡散』(日経サイエンス社)などがある。

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