しかし、2016年にこの人骨のDNA分析が成功し、年代が43万年前のものと訂正されたことで、ネアンデルタール人の直接の祖先と考えられるようになったのですが、分析の結果はそれほど単純なものではありませんでした。
驚くべきことに、「デニソワ人」という新たな人類との関係性が浮上。ホモ・サピエンスを含めた3者による意外な関連が判明することになったのです。
最古のヒトゲノムを発見
「シマ・デ・ロス・ウエソス洞窟」で発見された人骨群は、縦穴の地下13mの地点から出土。このような安定した環境に置かれていたこともDNAの長期保存を助け、最古のヒトゲノムの解析を可能にしました。
ネアンデルタール人の特徴を持つ直接の祖先?
「ネアンデルタール人」は、ヨーロッパや西アジアで生存した最も有名な化石人類です。成人の推定身長は150~175cm、体重は64~82kgというがっちりした体型をしており、脳容積は1200~1750mLと推定されています。頭部は、眉の部分がひさしのように飛び出し、前に突き出た鼻や太い頰骨が特徴です。
シマ・デ・ロス・ウエソス洞窟で出土した人骨には、これらの特徴が見られ、年代からもネアンデルタール人の直接の祖先だと考えられています。
DNA分析で明らかになった第三者との関係
シマ・デ・ロス・ウエソス洞窟の人骨は、DNA分析により43万年前の初期ネアンデルタール人のものと考えられましたが、さらにDNAによってその存在が初めて明らかになった「デニソワ人」と、ホモ・サピエンスとの関係性が明らかに。
約64万年前にまずサピエンス種が3者の共通の祖先から分岐し、さらに43万年より前にデニソワ人とネアンデルタール人が分岐したことがわかりました。そして、この3者は長期にわたって交雑していた可能性も判明したのです。
古代試料に残されたDNAはわずかで、これらの試料を増幅して分析を行いますが、このときに問題となるのが、現代人のDNAの混入(コンタミネーション)です。
最初は、この問題に注意が払われることは稀でしたが、近年はDNA分析を前提とした発掘が行われ、混入を防ぐための慎重な措置が取られています。
ネアンデルタール人の化石が発見された19世紀以降、彼らが私たちの祖先なのか、共通の祖先から派生した親戚なのか、論争が繰り広げられてきましたが、1997年に発表されたネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの研究によって一応の決着を見ました。
この研究では、ネアンデルタール人がホモ・サピエンスと70万~50万年前に分岐した親戚であるとされました。
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