ヒトの集団の力学、「協力」と「競争」の緊張関係 『「協力」の生命全史』書評

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『「協力」の生命全史 進化と淘汰がもたらした集団の力学』ニコラ・ライハニ 著
「協力」の生命全史 進化と淘汰がもたらした集団の力学(ニコラ・ライハニ 著/藤原多伽夫 訳/東洋経済新報社/2640円/354ページ)
[著者プロフィル]Nichola Raihani/英王立協会の大学研究フェロー。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン教授。人間を含めた生物の社会的行動の進化が専門。科学誌に70以上の論文を寄稿し、その研究成果で2018年度フィリップ・リーバーヒューム賞(心理学部門)受賞。本書が初の著書。

鋭い爪や牙を持たないヒトが地球最強の種となったのは、高度なコミュニケーション能力を用いて協力したからだ。例えばマンモスは、気候変動で数が減り、同時にヒトに狩られて絶滅したという。15人程度の群れで暮らすネアンデルタール人は、ヒトの大集団にはかなわなかった。

ヒトが直接統治できるのは今も最大150人程度といわれるが、私たちは中間組織や宗教、制度といったフィクションを作って協力し、数億人の国家統治をも可能にしている。繁殖のため進化の過程で淘汰圧が働き、競争だけでなく協力も本能に組み込まれたというなら、温暖化など地球規模の問題も解決可能だろうか。進化論、行動論の専門家が問うた興味深い一冊だ。

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