奔走する倉本昌弘PGA会長が胸の内を語った 「終わりかけのゴルフ界」を救う道とは?

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――ゴルフ場利用税について、その一部をゴルフ界に還元してほしいと主張されていますが、これまでになかった発想ですね。

それで怒られています(笑)。業界は全面撤廃を推進しているから。でも、長いことずっとやってきてなんら変わらないのだから、落としどころを見つけてゴルフ界にとってメリットになることを探ったほうがいいと思いませんか。

僕は基金も作りたいと考えています。プレーやショップで購入するたびに何%か10円いただくようにして、ゴルフ界みんなが使えるおカネを貯めていく。その基金は新しいゴルファーを増やすことに使えるといい。

見放されないために必死の米国ゴルフ界

――米国のゴルフ界は、改革によって厳しい時期を乗り越え、活況を呈している。

やはり、政治的にも経済的にも、力を持っている人材が要職に就いていることが大きい。PGAツアーのコミッショナーであるティム・フィンチャム(68)は40代後半で就任し、長期的な改革を行ってきた。

米国ツアーを長年取材しているゴルフジャーナリストの舩越園子氏は、米国ゴルフ界は「テレビなどメディアから見放されないようにという意識がすごく強い。ほかのスポーツもよく研究し、活性化につながりそうだと判断すればどんどん取り入れている」と指摘する。
その一例が、米国PGAツアーが行っているポイントレースのフェデックスカップ。終盤には上位125人が出場するプレーオフ4試合が行われるのだが、試合が進むにつれて下位の選手が脱落し、30人が進む最終戦で年間チャンピオンが決まる。「北米で人気を集めるストックカーレースのNASCARを参考にしたもので、大どんでん返しの可能性がある」(舩越氏)。
前出の広瀬一郎氏は、日本のゴルフ界に適切な人材がいなければ、外の世界から起用するのも手だと言う。
「オランダのサッカーチーム(AZアルクマール)が、オフィシャルアドバイザーにビリー・ビーン氏を起用した。ビリー・ビーンといったら、映画『マネー・ボール』のモデルで、米国メジャーリーグのオークランド・アスレチックスでGM(ゼネラルマネージャー)を務めていた人物。野球チームを立て直した実力派を起用する発想が面白い」

 

――日本のゴルフ界を変えるために、どこから始めますか

4月に、台湾と共同でシニアプロによる対抗戦を行ったときに、それぞれのジュニア選手も4名参加した。そして、各チームが獲得した賞金の10%を、ジュニア育成のためにそれぞれの協会に寄付した。こうした取り組みはひとつのきっかけになる。

ゴルファーが増え、アマチュアのレベルが向上すれば、ツアープロのレベルも向上する。ゴルファーが増えればティーチングの仕事も増える。われわれの仕事を増やすためにもゴルファーを増やしたい。少しずつ動けば、大きなうねりになっていくと考えている。

ほかのスポーツ競技団体では、バスケットボール界でサッカー界出身の川淵三郎氏が改革を進めていることが話題になっている(詳細はこちら)。
今後も東京オリンピックを控え、これまで以上にスポーツ競技団体のガバナンスにも注目が集まるはずだ。ゴルフ界が抱えている難題は、ひとつの団体だけで解決できるようなたやすいものではない。危機意識をバネに”業界の未来のため”に動き出し、好循環を生み出すことができるのか。あるいは、不干渉、無関心、内輪もめによって「結局何もできませんでした」で終わってしまうのか。後者のシナリオだけは避けてほしいものだ。

 

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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