地震にどこまで自ら保険で備え、税金で支えるか 保険金で建て直す人が減ると仮設住宅がかさむ

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応急仮設住宅(建設型)は、近年の資材価格高騰のあおりを受け、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震のときよりも高くなって、1戸当たりの建設費が1000万円で収まらないともいわれている。

しかも、新築した応急仮設住宅は、原則として供与期間は2年間とされている。2年経ったら、応急仮設住宅に住む人は出なければならないうえに、その建物は取り壊される。

税金で建てた仮設住宅を安価で払い下げ

そのような「無駄」をなくすために、最近では、応急仮設住宅を耐震性を高めて建て、取り壊さず半永久的に居住できるようにするという取り組みもある。

ただ、国が税金を注ぎ込んで建てた応急仮設住宅を、直々に居住者に無償で譲り渡すのは、あまりに露骨な利益供与である。そこで、応急仮設住宅をいったん国から当該自治体に譲り渡したうえで、その自治体が居住者と協議等をして支払える価格で払い下げるという方式がある。

地震保険に入っていれば、保険金はもらえるが、それだけでは自宅の建て直しができず、自己資金も多く出してはじめて自宅を建て直せる一方で、地震保険に入っていなければ、場合によっては、応急仮設住宅を極めて安価に取得できる。それとともに、応急仮設住宅の建設には多額の税金が投じられている。

それならば、地震保険など入らないほうがよい、と思う人もいるかもしれない。それでは、応急仮設住宅の建設費がかさみ、税負担が重くなって社会全体として望ましくない。備えがなかった人を事後的に救済するという現象を、経済学では「予算制約のソフト化」と呼ぶ。

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