なぜ成功者はワイナリー経営に乗り出すのか ナパの「ケンゾー・エステート」に行ってみた

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あさつゆ、明日香、藍、紫鈴、結・・・同エステートのワインは全て日本名だ。ナパバレーのワインの中で、類似の味わいのワインがあっても日本風の名を持つワインは高い品質と伝統を持っている印象を持たれ、マーケティングにも有利だろう。

同エステートのキャメロン・クラフト氏によれば「生産されたワインの8割が日本に輸出」される。ツアーも日本人のゲストが多いようで、東京や京都から訪れた8人のツアー組にも出会った。参加者は「日本には従来、本当に美味しいと思うようなカリフォルニアワインが少なかった。けれど、辻本氏のワインが入ってきて本格的にナパのワインが楽しめるようになった」と話していた。確かにカルトワインなど、出荷数がわずかで、日本市場にはなかなか入ってこない。日本市場にフォーカスしたナパ・ワインという意味で貴重な存在なのだ。

しかし、日本だけが頼みなのかといえばそうではない。クラフト氏は「最初の頃は日本人のゲストが多かったが、最近は40%ほど。今はアメリカ人が増えてきている」と言う。地元でも名前が知られるようになり、人気が高まっているのだ。

なぜ成功者はワイナリー経営に乗り出すのか

事業で成功し、現在はワイン造りに情熱を注ぐ辻本氏。そのワイナリーに興味をそそられ、今まで数多くの大企業のエグゼクティブが同エステートを訪れ、試飲してきた。

ニバウム・コッポラ・ワイナリーにはコッポラ監督ゆかりのさまざまな展示物がある

日本人だけでなく、欧米、台湾やシンガポールのエグゼクティブもワイナリーには興味津々だ。ナパバレーでは伝統的にITやビジネスで成功し、富を得たビジネスパーソンが引退後、ワイナリー経営に乗り出すことが多い。

ヒューレット・パッカードCEOを務めた故ルー・プラット氏は引退後、ケンダルジャクソンのCEOを務めた。またハリウッドのフランシス・コッポラ監督はニバウム・コッポラ・ワイナリーを持っている。コッポラ監督の場合、映画製作で幾度も破産したが、1975年に買い取ったワイナリーに映画で使ったセットなどを置き、そこがナパで一番人気となり 、資産を作った。

最近は経済人だけでなく、ハリウッドのスターや有名歌手などもワイン経営に乗り出している。ワイナリーを持たないものの、自宅にワイン用の貯蔵庫やセラーを持つエグゼクティブやセレブは少なくない。なぜ、エスタブリッシュメントはワインに興味を持ち、ワイナリー経営に乗り出すのだろうか。

エグゼクティブやセレブたちは、まずワインを飲むことから始め、この世界に詳しくなっていく。同じ1本のボトルで、ワインほど味も価格も違う飲み物はなく、ディナーの席でワインが話題の中心になることも少なくない。こうして、多くの人がその魅力にはまっていく。

いいワインづくりには、さまざまな条件が絡み合っており一筋縄で高い評価を受けるワインをつくれるわけではない。だからこそ、高いハードルを越えて成功を目指してきたチャレンジ精神の旺盛なエグゼクティブの心を引き付けるのだろう。

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