感情表現で交渉や面接の結果を有益に変える方法 人間の話し合いは理性以外の要素も大きい
具体的に見てみましょう。次の画像は、私が行った採用面接実験の一コマです。リクルーター側から希望勤務開始日を提示されたときの応募者の表情です。応募者はどんな表情をしているでしょうか。
相手の不安定な感情に気づけるか?

下唇を噛んでいます。これはマニピュレーターといい、何らかの感情がざわつくときの表情です。どんな感情かは特定できないものの、感情が生じ、波打っている。感情が安定していない。この表情に気づくことができれば、応募者が言葉では「わかりました」と納得していても、「言うに言えない思いがあるのかも」と推測することができます。
実はこの実験において、勤務開始日の条件は、応募者の希望とリクルーターの希望が相反するようにデザインされていました。この違いが、応募者の表情に表れていたことになります。
AIがますます発展する世界において、人間の理性の働きの多くは、AIが肩代わりしてくれるようになるでしょう。しかし、交渉に人間が臨む以上、そこには感情が介在します。自身の表情や交渉相手の表情を加味することで、相手の感情が変わり、交渉結果がAIによる予測とは異なるものになるかもしれません。交渉結果に影響を及ぼす理性と感情の関係に今後も注目です。
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