感情表現で交渉や面接の結果を有益に変える方法 人間の話し合いは理性以外の要素も大きい
本実験結果を、現実の交渉実務経験から捉えると、次のように考えることができると思います。
顧客よりも商品について熟知している営業員は、顧客のさまざまな表情を捉え、そこから顧客の欲求を推測し、欲求に応じて、商品情報やセールスポイントの出し方を変える。一方、売り上げの低い営業員は、潜在顧客の変化に関心を向けられず、決まり文句をただ話している。
顧客の表情から、もっとその情報を「聞きたい」という感情がわかれば、カスタムメイドの商品の説明ができるというわけです。意識、無意識問わず、優秀な営業員が実践しているのは、まさにこうしたことなのだと思います。
表情認識力がWin-Winを導く?
次に、採用面接の実験を紹介したいと思います。実験参加者を架空の会社のリクルーターと応募者にわけます。給与、休暇日数、引っ越し費用の払い戻しなど労働契約の8つの項目について、なるべく多くの利得を獲得できるよう交渉してもらいます。参加者は、実験協力金に加え、交渉の成績に応じて、賞金がもらえます。
この交渉に先立ち、参加者の①一般認知能力(GMA:理解力や論理的思考力などの知性を表す)、②情動知能(EI:心の知能指数とも呼ばれ、感情認識、感情促進、感情理解、感情マネジメントから構成される)、③感情認識能力を計測しておきます。
実験の結果、一般認知能力は、交渉結果に関連がないことがわかりました。一方、リクルーターの感情認識能力及び情動知能の感情理解のスコアが高ければ高いほど、リクルーター及び応募者の合算した利得は高まり、応募者の個人利得を高めることがわかりました。また、感情認識能力は、情動知能よりも一貫してこの結果を予測することがわかりました。
現実世界における採用面接において、観察力の高い採用面接官にあたった応募者は、言動から適切に考えや想いを捉えてもらうことができ、お互いの利害を慎重に加味してもらえるのです。
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