さらに皮肉なことに、バブル的な活動を行っていた企業には追い貸しを行った。つまり、バブル的活動により損失が膨らんだ企業から融資を引き上げることをせず、むしろ追加的に融資したのである。
典型的なのがゼネコンだった。融資を引き上げてしまうと、大企業であるゼネコンが倒産してしまい、すべての融資が損失になってしまう。そして、もっと手前の不良債権も、不良債権であることが明確になってしまうと、全額を引き当てなければならない。そうすると今度は、銀行自身が債務超過になり破綻してしまうリスクがあるから、不良融資先の不良債権を不良化させないために、追加融資を行ったのである。
バブルにまみれた企業は追加で救済融資に恵まれ、バブルとまったく無関係な健全な町工場は貸しはがされて、倒産あるいは廃業を迫られたのである。これが、あまりに理不尽なバブルの悪影響である。
バブルは30年をかけて日本経済をとことん破壊した
しかし、今回のコラムのメインの主張はその先にある。
日本経済は、1990年代が「失われた10年」といわれ、その後も経済の停滞が続いたとされ、2000年代も2010年代もだめで、「失われた30年」と呼ぶ人も多い。
だが実際にはこれは誤りで、2000年以降、景気はよくなったり、悪くなったりし、つまり普通に景気循環があり、欧米よりもインフレ率が低かった以外は普通だった。人口減少、とりわけ労働力人口の減少が大きかったことをかんがみれば、経済成長率はアメリカ以外の先進国の中では普通、生産年齢人口1人当たりで見れば最優秀の部類だった。
しかし、確かに、日本経済は30年間という時間を失った。30年かけて、すばらしかった日本経済と日本社会を破壊し続けてきたのである。そして、それはすべてバブルのせいなのである。
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