一般的な常識からすれば、後者のBISの見解がどう考えても自然であり、妥当(当たり前)に思える。だが、金融業界ではバブルで儲けたい人々が圧倒的多数派だ。そのため、現実の政策マーケットでもFEDの見解が2008年にリーマンショックが起きる前までは主流だったことの背景にあったと思われる。
「銀行システムへの影響」がカギを握る
実際、2007年7月、アメリカのシティグループの最高経営責任者(CEO)だったチャック・プリンス氏は、金融業界の常識として、「音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならない」と述べた。リーマンショックを経て、現在では、かつてのFEDの見解をあからさまに主張する人はいなくなったが、金融業界の本音は今も変わっていない。
しかし、ここで重要なのは、BISの見解が正しいということよりも、「どちらの見解をとるにせよ、実体経済への悪影響が、バブルの罪として最大のものだと誰もが認めている」ということだ。
その意味で、実体経済への被害が少ないバブルであれば、バブルの中では「まし」なほうだ、ということである。そして、それは銀行システムへの影響がカギとなる、ということである。
これは、現在もリーマンショック時も、FEDが巨額の「国債などの資産の直接買い入れ」を行ったのは、銀行システムおよび金融市場を含む金融システムを守るためであり、株式市場そのものではなく、ましてや株価の下支えということではまったくない。
それにもかかわらず、欲望にまみれた市場関係者たちは「グリーンスパンプット」「バーナンキプット」などという言葉を臆面もなく使い、相場が下落したときに効果を発揮するプットプションのように、中央銀行が金融緩和策で助けてくれると期待した。
また最も鈍感な人々は、何の疑問も持たずに、中央銀行の金融政策は株価対策のためにあると思い込んでいたし、今もそう思っている人は少なくない。だが、FEDは株価の暴落など気にしない。
確かに、下落が景気に与える影響については考慮に入れる。ただし、あくまでインフレファイターがメインの役割だと思っているし、その基準で行動している。
さて、銀行システムへのダメージというのがバブルの最大の悪影響であることは学会のコンセンサスであるが、日本の1980年代のバブルが1990年代の日本経済を破壊した例を思い出せば、一目瞭然である。
不動産バブル崩壊で銀行の資本が毀損し、銀行はバランスシートの修復を迫られた。そこで彼らは、貸しはがし、貸し渋りを行った。つまり、新規の不動産関連融資などはもちろん全面停止だが、それだけでなく、不動産とも、さらにはいかなるバブル的な活動とも無関係の融資先や地道に仕事をしていた町工場、中小企業にも行った。バブル崩壊のダメージは健全な業種へも幅広く波及した。
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