どういうことか。まず、そもそも「本当の」失われた30年(正確に言えば、日本経済をだめにした30年)とは、1980年代半ばに始まる。つまり、バブル絶頂期である。これが日本経済をとことん破壊した。
日本は世界最強の経済を謳歌していた。欧米諸国が2度のオイルショックに苦しみ、インフレーション、スタグフレーションに苦しみ、高い失業率、永遠に停滞するかに見えた株式市場で、陰鬱な経済社会となっていたのに対し、日本経済は世界一の品質の製品を誇り、省エネでエネルギー危機を乗り切り、インフレのコントロールにも成功し、労使関係は良好、世界一の経済であり、将来性も世界一に見えた。完璧だったのである。
「失われた30年」の根本的な原因とは何なのか
しかし、それが慢心を招いた。ものすごく儲かった。消費におぼれる人々に対しては、何でも売れた。だから、ただバブリーなものを売り出せば高く売れた。
サービス消費も、多くは社用、経費による支出だったから、目利きをする消費者は存在せず、限られた予算の下で見る目の厳しい消費者に選ばれる製品づくりというモデルは、特にサービス産業で失われた。
成熟経済、真に豊かな消費社会におけるサービス産業のビジネスモデル戦略を立てる企業がなかったのである。既存の企業が今までどおり、そして好き勝手にやっていれば儲かった。インバウンドの金持ちの観光客を相手にするようなものである。ちょろい消費者相手に、楽をして稼いだのである。
これにより、新時代のビジネスモデルを確立すること、あるいは、新しいビジネスモデルのためのアイデアの準備、そのための試行錯誤の投資を怠ったのである。これが「失われた30年」の根本的な原因である。
だから、安売りをしたり、昔の高度成長期のひたすらコスト削減で競争力の回復を図るという単純なモデルへ逆戻りするしか、生き残る道がなくなったのが2000年代であったのだ。
先に飛んでしまったが、1990年代が失われたのは言わずもがなである。ひたすらリストラを行った10年間であった。銀行危機、金融危機があったから仕方がなかったが、しかし、その原因はバブル期にあった。いわゆる「3つの余剰」、余剰人員(高すぎる中高年の正社員の賃金)、余剰設備、そして余剰な資産(肥大したバランスシート)である。
これらの処理、リストラ、スリム化に終始したのが1990年代であった。処理したのは不良債権だけではない。むしろ、不良資産と呼ぶべき余剰があらゆるところにあった。処理に終始して1990年代は終わった。
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