競馬である。
日本競馬は、今や海外の騎手にとって憧れの的だ。昨今の日本観光ブームと相まって、今年1月から前代未聞の大量の新規外国人騎手がJRA(日本中央競馬会)競馬にやってきた。
しかし、2カ月が経って、何人かは予定を短縮してすでに帰国してしまっている。大成功といえるのはレイチェル・キングという豪州で活躍している英国出身の女性騎手だけで、多くの騎手があまりうまく日本の競馬に対応できなかったようだ。
これは、基本的には今やJRA騎手のレベルは世界最高に近いということだ。しかし、この事実が、別の面で日本競馬に問題を生じさせている。
それは、日本では騎手がスターでありすぎることだ。騎手が主役になりすぎているのである。実は、これが外国人騎手にとって最大の日本競馬の魅力である。競馬場のファンが騎手を大スターとして応援する。これは日本以外では見られない。
調教師が「中間管理職」のような立場になる日本競馬
日本で騎手がスターでありすぎることによって、何が起こるか。調教師が、巨大な生産者である社台グループと、スターである騎手(社台グループがプッシュする騎手でもある)の狭間で、中間管理職のような中途半端な立場になってしまうのである。
このJRA調教師の微妙な立場が、実際のレースの結果に影響を与えた興味深い例が1つある。2月24日にサウジアラビアで行われたレースに出走したある日本馬は、前のポジションを取りに行ったが、行き脚がつかず、よいポジションは取れなかった。かつ、騎手が促したためにかかってしまい(興奮してしまい)、前半リラックスして走ることができず、惨敗してしまった。以下に、レース後のそれぞれの談話を抜粋してみよう。
まず、調教師は「可能ならポジションを取ってほしいが、スタート次第であとは騎手に任せる」と伝えたという。また、騎手も「ポジションを取れるなら取ってみる」ということでレースに向かった。その後はどうだったか。騎手は「ポジションを取ろうと思ったが、二の脚がつかず、後方からになった。それならば外を回らされるよりもましだと思い、馬群の中で脚をためた」という。
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