株価が暴落するかしないかは大した問題じゃない バブルで何を失ってしまったのか

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例えば、バブル研究家としても有名なプリンストン大学教授のマーカス・ブルネルマイヤー教授によるバブルの分類でも、銀行システムが巻き込まれているかどうかで、金融バブルの性格は大きく異なるとされている。

重要なのは「警察」なのか「消防署」なのか

また、歴史的に、経済学者の間では金融バブルへの対処法として、アメリカの中央銀行であるFEDの見解と、スイスに本部があるBIS(国際決済銀行)の見解が対立していた。

つまり、前者は、バブルは事前には判定が難しく、また事後に(バブル崩壊後に)適切な金融政策を行えば(要は大胆な緩和を続ければ)、被害は広がらずに済む、という考え方をとる。

後者はまったく正反対で、バブルはバブル膨張の最中にある程度判断が可能であり、膨張をさせないか、最小限に食い止めることが、金融バブルによる被害を実体経済に広げないために重要であり、事前の監視と抑止が重要だ、という考え方をとる。

前者が“消防署”で後者が“警察署”という比喩もある。火事を消すのが重要か、火事を起こさないのが重要か、ということである。

前者では、経済学者のミルトン・フリードマン氏が「1929年の大恐慌の被害があれほど大きくなったのは、金融バブル崩壊自体ではなく、中央銀行が金融緩和のあと、引き締めに転じたのが早すぎたからだ」と主張した。また、FRB(連邦準備制度理事会)元議長のベン・バーナンキ氏が行った大恐慌の研究においても、その系統の議論が強調された。

この見方が21世紀初頭に支持を増やしたのは、テックバブル(ITバブル)が2000年に崩壊したあとだ。このときはバブルが崩壊しても、事後の実体経済への影響が小さかったことから(アマゾンなどの「ドットコムバブル」による株価上昇はすさまじかったにもかかわらず)、「バブルが崩壊したあとの適切な処理さえ行えばよい」という主張が力を得た。

後者は、伝統的には見識のある主流派である。チャールズ・キンドルバーガー氏を始め、多くの歴史家や経済史家によって支持され、ジョン・ケネス・ガルブレイズ氏もこの考え方だった。

以前「やっぱり今は金融危機への『黄信号』が灯っている」(2023年8月19日配信)でも言及した、ハーバード大学の行動ファイナンスプロジェクトのリーダーであるロビン・グルーンウッド教授の研究でも、この対比がなされている。

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