株価が暴落するかしないかは大した問題じゃない バブルで何を失ってしまったのか

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まさにチクハグだ。しかし、これは調教師が悪いのでもなく、もちろん騎手も悪くない。問題は、調教師がJRAの日本人調教師であり、騎手が外国人騎手であったことである。

日本以外の騎手にとっては、調教師の指示は絶対である。だから「ポジションを取ってほしい」と言われれば、必ず取りに行く。だから「ポジションを取ってほしいが、任せます」というのは、日本人的にはこうだろう。「基本的に任せる。あえてもっと明確に言語化すれば、ポジションが取れれば理想的だけど、この馬はいつもポジションが取れないから、まあ任せます」ということだ。要は「全部任せた」ということだ。

そして、調教師は「騎手よりも偉い」というのが常識というか、そういう契約上の決まりだということを意識していない。これは「JRA病」ではないか。

しかも、この外国人騎手が日本の関係者にとっては神様のような騎手である。だから「もちろん任せる。でも、あなたなら奇跡的にポジションを取ってくださるかも」などという、はかない夢をつい口走ってしまったのである。

一方、騎手のほうは明確だ。調教師の指示は絶対だから、ポジションは取りに行った。それでだめだったからプランBに移行した、ということだ。

多くの日本企業も「基本中の基本」ができていない

実は、これはJRAだけではなく、日本のすべての産業のすべての企業にいえることだろう。グローバル経営が当たり前になった今、世界標準というより、法律や制度上、大前提になっているものを明確に意識する必要がある。

誰がボスなのか。ボスは誰に指示を出すか。そういう当たり前のことを当たり前に行い、その前提で、実力による競争を行い、優秀なボスがとことん偉くなり、ダメなボスは淘汰されていく。この基本中の基本が、多くの日本企業でできていない。

JRAの調教師においては、とりわけ成立が難しい産業構造(調教師を取り巻く環境)となっている。これこそ、真っ先に改善すべきことである。具体的な提案は、次回にしたい。

さて、週末の10日は中京競馬場で金鯱賞(第11レース、芝、2000メートル)がある。すっかりG1級のG2として重要なレースのポジションを獲得した。

今回は、現在のJRA所属騎手の2大スターである、クリストフ・ルメール騎手と川田将雅騎手の一騎打ちだろう。

ルメール騎手が騎乗するドレッツァは昨年10月の菊花賞がとてつもない勝ちっぷりであったが、あれは馬がすごいのか、機転を利かせて突然逃げたルメール騎手がすごいのか、それともほかの馬が弱すぎたのか。まったくわからないので、ここが試金石。なので、確実にG1級で川田騎手が騎乗するプログノーシスが本命。単勝。

※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は3月16日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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