「27浪で遂に掴んだ慶應合格」45歳新入生の挑戦 合格を掴んだこの1年の奮闘、今後の夢も聞く

✎ 1〜 ✎ 62 ✎ 63 ✎ 64 ✎ 最新
拡大
縮小

慶應の英語の自己採点の結果は、えぐざまさんいわく「多分5割」。他の科目は得意だったのでもう少し高く取れたと思えたようですが、一般的に7割程度の得点率が必要とされる英語が足を引っ張り、合格するには到底足りない数字と思っていたそうです。

私大の最高峰・早慶の受験は、SNSや予備校の解答速報、YouTuberの解説動画なども充実していて、解答や解説の情報が次々に流れてきます。「これぞ早慶の隠れた凄さだと思いました」。

自分の戦った「祭りのあと」の雰囲気に思いを馳せながらSNSを見ていた彼は、「今年の英語は難化した」「合格最低点は確実に下がりそう」という噂がネット上で流れ始めているのを確認します。しかし、それでも本人の中では「合格可能性は1%未満」と考えており、受験の熱が冷めないうちに翌年に向けて準備を始めようと、参考書を開き始めていました。

「早慶に受験に行けたことだけで、十分満足していました」

結局、合格発表の朝も合格に希望を持っていたMARCHのときは「時間前にパソコンの前に正座していた」のが、早慶になると「発表時刻の直前にようやくパソコンを開き、やる気なさげに不合格通知の確認をした」そうです。本人的には「補欠だったら知り合いに自慢しよう」ぐらいに思っていたようでした。

慶應卒業後の彼の夢

しかし、人生は面白いものです。早稲田こそ不合格でしたが、慶應の合否発表でえぐざまさんの眼前に現れたのは「合格」の2文字でした。

濱井正吾 浪人 えぐざま 27浪
オンライン合否案内(写真:えぐざまさん提供)

MARCH合格のときにも、慶應受験のときにも涙した彼。しかし、このときばかりは本当に夢にも思っていなかったようで、「ただただ呆然としていた」そうです。

事態を飲み込めずに数分沈黙したあと我に返ったえぐざまさんは、誰もいない家でガッツポーズしながら慶應義塾塾歌を歌い始めました。苦節27年。ついに、夢が叶った瞬間でした。

大学生のときも、社会人として働いているときも、いつも心のどこかでは浪人生だった」と語るえぐざまさんの「浪人生」という称号を、彼はついにこれ以上ない形で返上することになりました。しかし、彼の野望はそれでは終わりません。

「卒業後は東大か京大の大学院に進学して生涯をかけて教育学を研究します。その意味でも、もう一度学部からみっちり勉強して、先生方や若くて優秀な学生から知識や考え方などを吸収して、研究の礎を積み上げていきます」

浪人という枷が外れたえぐざまさんの新たな人生が、今まさにスタートしました。

えぐざまさんの浪人生活の教訓:遠ければ遠いほど、勝ち取った喜びは大きい
濱井 正吾 教育系ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はまい しょうご / Shogo Hamai

兵庫県出身、1990年11月11日生まれ。「9浪はまい」のニックネームでTwitterやYoutube、テレビ出演などを行っている。大阪産業大学経済学部経済学科に入学後、龍谷大学経済学部現代経済学科に編入学し、卒業。 高校時代にいじめを受けたことから、いじめっ子を社会的に偉くなって見返したいと思い、在学中から仮面浪人として受験勉強を4年間続ける。大学卒業後、証券会社に契約社員として就職したが10日で自主退職、同月中に配置薬会社に再就職。昼は会社、夜は予備校という生活に。同社退職後は受験勉強に専念し、9浪で早稲田大学に一般受験で合格し、2018年に教育学部国語国文学科入学、2022年卒業。現在はカルペ・ディエム所属。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT