広がる波紋、仏「ウクライナ派兵を排除せず」の思惑 ロシアによる侵攻から2年、マクロン大統領が言及

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マクロン氏の政治的求心力は落ちている。昨年、支給開始年齢を段階的に引き上げる年金改革法や移民の受け入れを厳格化する移民法など、賛否が激しく対立する法律を強引に成立させたボルヌ前首相の退陣の背後にマクロン氏の圧力があったことは誰もが知っている。そして今年は農業政策で農家から激しい反発にあった。

足元の与党ルネッサンス党は下院で過半数割れしており、頼みの中道右派の協力も得られていない状況だ。最新の世論調査での支持率は27%と低迷している。

外交で得点を挙げるのが喫緊の課題

大統領が外交、首相は内政という暗黙のルールのあるフランスで、外交で得点を挙げるのがマクロン氏の喫緊の課題だ。

ウクライナ紛争で和平実現に一役買えば、大きな得点になるのは間違いない。そのためには従来のやり方では成果は出せない。さらにアメリカ大統領選の最中、トランプ氏が再選されれば、アメリカのNATO脱退の可能性もある。そうなれば、欧州の自主防衛は急を要す問題だ。

とはいえ、誰も戦争は望んでいないし、フランスのウクライナ紛争参戦は「国益にならない」ことは、専門家の意見を待つまでもない事実だ。それに世界の誰もがウクライナ紛争のエスカレーションは望んでいない。そのため、抑止という意味もあってギリギリの圧力をプーチン氏にかけてでも交渉の席に着かせるマクロン氏の差し迫った事情もあるといえそうだ。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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