半身マヒの91歳男性「人生で最後の帰省」のリアル 「1泊だけ」受け入れてくれる特養を探して…

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事前の準備がしっかりしていたこともあり、1日目は、特にトラブルもなく、岐阜に到着することができた。話を通してある特養に奥田さんを送り届け、佐々木看護師たちは岐阜駅近くのホテルに直行した。

せっかくの地方出張だ。現地の特産品を肴に一杯やりたいところだが、1泊2日のツアー全体が仕事である。酒を飲むわけにはいかない。奥田さんの状態によっては、夜中に駆けつける必要がないとも言えない。

「夕食はホテルでコンビニ弁当だけでした(笑)」(佐々木看護師)

気になるのは、夕方過ぎに雨が降り出したことだ。明日は朝から墓参りだ。雨が長引けば、その行程に支障が出るかもしれない。不安を感じながら、佐々木看護師は早めに床についた。

そして翌日。墓参りについては前編で詳述した通りだ。なんとか墓参りを終わらせた後、奥田大介さんの案内で、奥田家代々の家に向かった。

「源三おじちゃんが東京から来てるので、ぜひ会いたい」

と、親戚が集まっていた。

「奥田さんとしては、もしかしたらこれが最後の帰省になるかもしれない、という思いがあったのかもしれません。久しぶりに会った親戚たちと、始終笑顔で話しておられました」(佐々木看護師)

帰りの車の中で2時間かけて膀胱洗浄

親戚たちに別れを告げ、東京へ向かって車に乗り込んだ。

「最後に尿道カテーテルの洗浄という大きな仕事が残っています。特養の看護師から申し送りがあったように、奥田さんの場合、カテーテルの洗浄は2日に1回です。

持続還流といって、カテーテルに生理食塩水を流し込みます。これが尿道から膀胱を巡って、尿とおなじように排出され、尿バッグに還流します」(佐々木看護師)

尿道カテーテルを使用している場合、定期的に膀胱洗浄を行うことで、沈殿物や結石などによる尿路の閉塞を防止することができる。指示された生理食塩水の量は500CCだ。点滴により2時間かけて、注入する。

「流し込んだ量と、排出された量が同じになるか、観察しながら進めます。これを帰りの車の中で行いました。幸い、問題なく、持続還流の洗浄を行うことができました」(佐々木看護師)

事前の準備と、その場の機転、そして何より、参加した全員のチームワークによって91歳の奥田さんの旅は完了した。

介護タクシーの車内で会話をする佐々木看護師(右)と奥田さん
介護タクシーの車内で会話をする佐々木看護師(右)と奥田さん(写真は上山浩司さん提供)
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