半身マヒの91歳男性「人生で最後の帰省」のリアル 「1泊だけ」受け入れてくれる特養を探して…

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そう考え、いくつかのサービスエリアをピックアップし、駐車場の広さや、レストランの使い勝手などをチェックした。ただ、実際のところは、利用者本人に会ってみるまでわからない。

ツアーそのものを計画したのは、奥田さんの成年後見人である司法書士の上山浩司さんだ。上山さんと日本ツアーナースセンターを結びつけたのは地元の社会福祉協議会の関係者だった。

「もし長距離の旅行をするなら、こういうサービスがあるよ」

と紹介されたのだ。上山さんは、すぐに日本ツアーナースセンターに連絡をし、事務局と連絡を取りながら、ツアーの日程を詰めた。

「不安もあったのですが、出発の当日を迎えることができ、まずはホッとしました」(上山さん)

2日おきに尿道カテーテルの洗浄が必要

ツアーの当日、午前7時に、ツアーの主役である奥田さんの住む中野区の特養に集合だ。佐々木看護師が現地に到着すると、介護タクシーはすでに駐車場で待機していた。佐々木看護師はドライバーの飯田さん(仮名)と名刺を交換し、行き帰りの行程について打ち合わせた。

しばらくすると、特養の看護師と上山さんに伴われ、車いすに乗った奥田さんが駐車場までやってきた。簡単な挨拶を済ませると、特養の看護師から奥田さんの日常生活に関する申し送りが行われた。

「脳梗塞の後遺症でマヒと膀胱機能障害が見られるため、奥田さんは自力での排尿が困難です。尿道カテーテルを使っているのですが、2日おきに、洗浄が必要です。昨晩洗浄したので、明日のどこかで、500CCの持続還流洗浄をお願いします」(洗浄の詳細については後述)

佐々木看護師はメモを取りながら、その説明を聞き、自分からも質問する。

「昼食は通常、何時に摂られていますか」

「だいたい、11時半くらいですね」

数時間に及ぶ車の旅は、奥田さんにとって非日常だ。しかし、生活のリズムをなるべく壊したくない。昼食はいつもの時間通りに食べられるよう、佐々木看護師は頭の中に地図を広げ、

「談合坂あたりで一度休憩して、昼食は諏訪湖サービスエリアくらいかな」

と、行程をイメージした。

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