現在、奥田さんは東京都中野区の特別養護老人ホーム(特養)に入居している。ツアーの数日前、佐々木看護師の元に奥田さんの診療情報提供書が届いていた。担当の医師が既往歴などについて細かく記した書類である。
これに目を通せば、ツアーの最中にどういったことに注意を払えばいいのか、大まかな計画をたてることができる。
「尿道カテーテルを使っているようなので、道中これの処理が必要になるだろうな」
そういった、医療者の目線でのチェックだ。
ほかにも、高齢であること、右半身にマヒが残っていること、口から食べることはできるが、時々むせることがあることなど、佐々木看護師は診療情報提供書を丁寧に読みながら、ツアーの全体像を頭の中で組み立てた。
介護タクシーでも、長距離だと負担は決して小さくない
東京から岐阜まで、主に中央高速道路を使う片道約400キロメートルの旅だ。
今回は、車いすをそのまま積み込むことができる介護タクシーでの移動となる。
高齢者や病気を持つ人の送迎に慣れている介護タクシーとはいえ、車での長距離の移動は、利用者に大きな負担だ。
「休憩を多めに取りながら、無理のない旅を」
と佐々木看護師は考えていた。
地図をにらみながら、
「中央自動車道を使って、休みなしで向かえば、5時間ほどの行程だけど、途中最低でも4回は休憩を取りたい」
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