から好し、唐揚げ店なのに「そば」がある一体なぜ シンプルで潔いもり蕎麦が、男性客の心を掴む

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ここであらためて、から好しの紹介です。すかいらーくホールディングスが展開しているから好しは、2017年に誕生。2023年12月末時点で店舗数は67を数えます。

から好しが誕生したきっかけの一つが、軽減税率制度でした。2019年に消費税が10%へと引き上げられるとともに、軽減税率制度が開始。それに先立ち、イートインとは違って軽減税率の対象となるテイクアウトに着目したそうです。

また、当時はアメリカで「ファストカジュアル」と呼ばれる、専門店の味を気軽に楽しめるような業態に人気が集まっていました。

軽減税率と合わせて、日本でもこうした業態が人気になるのではないかと考え、これまでファミリーレストランで培ってきたノウハウやスケールメリットを生かせる「から揚げ」に目をつけました。

もともとガストなどでもから揚げは提供していましたが、から好しの立ち上げに当たって“聖地”ともいえる、大分県中津市での現地調査を実施。そこで、特にから揚げで重要な要素として「漬け込み」と「粉付け」の2つを発見したそうです。

そのため、から好しのから揚げでは漬け込みと粉付けに特にこだわっているといいます。漬け込みでは、にんにくとしょうがを使わずしょうゆベースにすることで、毎日食べても胃もたれせず、またランチタイムでも気軽に食べられるようにしました。

漬け込みをした肉は、冷凍せずに店舗へ配送し、各店舗で粉付けを行っています。ポイントは、粉を付けたあとに少し肉を寝かせること。寝かせることで粉と肉がなじみ「外カリ中ジュワ」の理想的なから揚げに仕上がるそうです。

こうして工夫を凝らしたから揚げを軸に、から好しはコロナ禍のテイクアウト需要にマッチ。2020年度以降はガスト全店でから好しのから揚げを展開し、導入した店舗では未導入の店舗と比較して、売り上げが7%、中でもテイクアウトの売り上げは57%も向上したそうです。

ガストとの併設店で、コロナ禍の需要の受け皿となってきました(画像はすかいらーくホールディングスの2020年度通期決算資料をキャプチャ)

市場激化でメニューを拡充

ただ、から揚げは比較的参入障壁が低い業態であることから、市場の取り合いが激化。日本唐揚協会の発表によると、2012年には450店舗だったところ、年々増加を続けて2021年には3000店舗を突破、さらに2022年には4000店舗を突破するなど猛烈な勢いで増えてきました。

その中でから揚げ以外のメニューも拡充しようと開発したのが、今や3大メニューとなったそばであり、親子丼です。

このうちそばについては、もともとすかいらーくグループ内の藍屋や夢庵で提供していたことから「そばのニーズの高さには確信を持っていた」と久保木さん。

同じ麺類のうどんやラーメンと比較して、ロードサイドでそば店を見かけることが少なく、参入障壁がそこまで高くないと考えたのも、目をつけた理由の一つでした。

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