「ストロング痛飲と市販薬乱用」にみる根深い問題 「ストロングはドラッグ」と警鐘した医師に聞く

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ストロング系缶酎ハイと市販薬
ストロング系酎ハイと市販薬。いずれも身近な商品だ(記者撮影)
 新宿・歌舞伎町「新宿東宝ビル」近くの通称「トー横」では、少し前まで異様な光景がみられた。平日深夜にもかかわらず、道に座り込んで談笑する10代とおぼしき若者たち。手にはストローの刺さったストロング系酎ハイの缶。そばには市販の咳止め薬の空箱が転がっていた――。
 ストロング系の持つ「危険性」に警鐘を鳴らしてきた医師がいる。国立精神・神経医療研究センターの薬物依存研究部長を務める松本俊彦氏だ。一部の若者たちが行っているストロング系の痛飲と市販薬の過剰摂取。松本氏に取材するとさまざまな問題がみえてきた。


──精神科の臨床からストロング系酎ハイの何を懸念してきたのかでしょうか。改めて教えてください。

薬物依存の患者を日ごろ診ている立場からいうと、ストロング系がお酒ではなく、ドラッグと化していることを気にしてきた。以前も指摘したように「意識を飛ばす薬物」としてだ。
(詳細は2020年12月5日配信の「精神医療の現場で感じるストロング系のヤバさ」に)

市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)がとくに若い人たちの間で増えた。気分をハイにするといった目的で市販の咳止め薬などを胃に流し込む。その際にストロング系が使われる。摂食障害に悩む女性が、ドカ食いしたいとの衝動に駆られたときに、ストロング系で意識を飛ばすケースも多い。

現在のオーバードーズ問題に至る歴史

──そういう人たちの中では、いろいろあるお酒の中でもストロング系が選ばれている、と。

あくまでも私の視点になるが、市販薬のオーバードーズやリストカット、摂食障害に悩む若い女性が飲むお酒は、ストロング系の割合が高い印象だ。一般の人がストロング系を手にする頻度は減ったかもしれないが、そこは変わっていない。

彼女らの中には「お酒は好きではないけれど、飲みやすい味のストロング系であれば」という子が多い。またストロング系のベースはウォッカなどの蒸留酒。ビールなど醸造酒より太りにくいとされるので、それも好まれているのだろう。値段の安さも選ばれる理由となっている。

アルコール度数の低い商品は税率を低くする反面、度数の高い商品は税率を高くするなど、北欧のように国民の健康を守る政策を国は採るべきだ。だが日本では、発泡酒が売れたらその税率を高くしましょうと動く。税収ありきにみえる。

発想の転換が必要なのは、ほかの薬物政策においても同じ。過去には危険ドラッグのようなモンスターを生み出した。そして現在は、市販薬のオーバードーズ問題で打開策を見いだせずにいる。

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