「ストロング痛飲と市販薬乱用」にみる根深い問題 「ストロングはドラッグ」と警鐘した医師に聞く
今から100年ほど前、アメリカでは禁酒法の時代にヤミ酒が横行した。質の悪い蒸留酒を飲んで失明する人が続出した。これは規制の功罪。すべての医薬品や嗜好品に共通する話だと思っている。
──いたちごっこから抜け出すには?
「薬に依存せざるを得ない人たちをどう支援していくか」という観点を、薬物政策に入れることだろう。今はそこが抜けている。
オーバードーズしている子たちは、親による虐待、学校でのいじめ、性被害など過去のつらい記憶を忘れたい、落ちこんだ気持ちを紛らわせたいというときに薬に手を伸ばしている。ストロング系で酩酊している子たちも同じだ。
薬物政策に欠ける「人」の議論
日本の薬物政策の特徴は、もっぱら薬というモノに対する規制や制限に注力している点だ。市販薬のオーバードーズ問題をめぐる足元の議論も、製薬会社の人や薬学の研究者など薬に関わる人たちで行われている。
私の元には、肝臓を壊して黄疸が出るまでオーバードーズを連日続けたような子も来る。しかし、そのような薬に手を出さざるを得ない子たちの支援をどうするのかという「人」についての議論がなかなか上がってこない。
ストロング系も市販薬も、自殺願望のある若者が使うようになっている。その人たちをどう支援するのかを議論しないと、いつまでもいたちごっこ。この状況にそろそろ終止符を打たないといけない。
──社会的責任として企業が行えることはないのでしょうか。
企業は本能的に利益を追求する集団。許認可する国が手綱を握ることが必要では。ハイミナールのときは国が医薬品販売業者に対する取り締まりを強化した後、販売停止に至った。