「ストロング痛飲と市販薬乱用」にみる根深い問題 「ストロングはドラッグ」と警鐘した医師に聞く

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セルフメディケーション推進のために市販化された薬には、注意すべき成分が入っていることがある。多くの人は、市販薬を「処方薬より効き目が弱いけれど副作用も少ない」と思っているはず。でも医者からすると、そうではない薬が少なくない。

また、こうした薬は乱立するドラッグストアやネット販売でいつでも手に入るようになった。市販薬に誘導する政策は本当に国民の健康を守っているのかという、根本的な疑問に突き当たってしまう。国民の健康に資するかどうか、慎重に検討する必要がある。

ストロング系は飲酒文化を壊した

──他方でストロング系は先生のような警鐘が届いたのか、アサヒビールのように新規販売をやめる流れが強まっています。

実は啓発の難しさを考えさせられた。ストロング系の危険性を警鐘すると、その危険性に関心を持つ層も一定数いる。自傷行為の一環としてあえて手を伸ばす人たちだ。本当に難しい。

ストロング系缶チューハイ
食品スーパーで特設コーナーができるほど人気商品だったストロング系(2021年に記者撮影)

酒類メーカーの方たちには、度数も大事だけれど、お酒を介してどのような「文化」を売るのかを改めて考えてほしい。ストロング系は飲酒文化を一部壊したという気がしている。おいしい食事とお酒を楽しむというのではなく、ドラッグとして飲むという形にしてしまった。

私はお酒を絶対悪としてはとらえていないし、生活を豊かにするところもたくさんあると思っている。そういうお酒の売り方をぜひお願いしたい。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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