「ストロング痛飲と市販薬乱用」にみる根深い問題 「ストロングはドラッグ」と警鐘した医師に聞く

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──どういうことでしょうか。

それを説明するには薬物乱用の変遷をざっと振り返る必要がある。

昭和30年代の後半、ハイミナールという市販睡眠薬の若者による乱用が問題となった。これは国の規制ののちに販売中止となった。その後、昭和40年代から流行ったのがシンナーだった。

新宿駅(東京)周辺に集まった若者集団のフーテン族が、「ラリる」ためにハイミナールの次に使ったのもシンナー。私の中学生時代を振り返っても、同級生の半分くらいはシンナーを1回はやったことがあるという感じだった。

いたちごっこの末に「危険ドラッグ」

販売行為の規制などでシンナーの乱用が減ってきて、次に来たのが、ヘロインやコカインの仲間のような成分が入っていた市販薬の一気飲み、そして覚せい剤をあぶって使うブームだった。1980年代後半や1990年代のことだ。

2000年以降になると、大学生が大麻所持や売買で逮捕される事件が続いたことで取り締まりが強化された。そうすると大麻に似たものとして脱法ハーブが出てきた。さらに危険ドラッグが登場した。規制や取り締まりとのいたちごっこを繰り返すうちに、中身がどんどんやばくなった。

松本俊彦氏
国立精神・神経医療研究センターで薬物依存研究部長を務める松本俊彦氏(オンライン取材時のキャプチャ画像)

危険ドラッグの規制を強化する改正薬事法(現・医薬品医療機器等法)で、販売規制などを行い、店舗経営が成り立たないようにして販売店舗を一掃した。それが鎮まったと思ったら、今度は市販薬のオーバードーズ問題が来た。

──入れ代わり立ち代わり、新たな薬物が問題になるんですね。

オーバードーズされる市販薬にも、危険ドラッグと同じように規制がかかりはじめた。

乱用依存のおそれがある成分を含有する市販薬に関しては今、1人1箱までなどと店頭で販売個数制限をしている。だが、販売個数制限をすると依存者は、規制がノーマークの別の市販薬へ移るだけだろう。

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