Appleに先行、日本発「定額」音楽配信の勝算 サイバーエージェント藤田晋社長に聞く

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――エイベックスと企業文化の違いはありますか? 合弁会社がウマくいかないとき、問題になるのは企業文化の違いだったりもしますよね。

エイベックスの人はノリがよく、当社とも似ていますね。あと、気合が入っているところも似ているでしょうか。「絶対に負けない!」みたいな現場の気合を感じますよ。あと、私と松浦さんは仲がいいので、2人が何かを決めれば、そのまま決定事項として物事を進めやすいという意思決定の早さも、うまくいっているポイントだと思います。違う会社同士で合弁会社をやると、意思決定に時間がかかりがちですが、今回はそこがまったくなかったですね。

SNSのような中毒性のあるメディアに育てたい

――年内500万曲を目指しているとのことですが、いかにして曲数は増やしていくのですか?

曲の網羅性を重視しています。ある一定のカテゴリーが好きな人に、「こんな曲まであるんだ!」「こんなアレンジバージョンまであるんだ!」ということを訴えるのが大事なので、それらをそろえていくことが必要ですね。それはインディーズ・レーベルを網羅することも重要ですし、誰が権利を持っているかわからないものを、つぶさに連絡して確認して回るとか、そういった地道な作業をやり抜くことが大事です。

現在、メジャーなレーベルはひととおり入ったとはいえ、それでも漏れているレーベルやアーティストもあります。楽曲を提供しない方針のアーティストもいますし、ただ単に漏れている人もいます。こういったところをまずは把握し、交渉していきます。続いては、インディーズ・レーベルと一つひとつ交渉していくことによって増やしていきます。

――会員数の多さやAmebaにはそれほどアテにはしていないと言いましたが、これまでのネットビジネス経験から培った資産は今回どう生きましたか?

それこそ、ものすごく生きていると思います。私たちはスマホの黎明期から「デカグラフ構想」を打ち立て、プラットフォームとしてスマホ向けサービスを会員に提供してきました。また、ブラウザサービスもネイティブアプリもどちらも手掛けてきて、さまざまなトライをした結果、成功するサービスの傾向が今はかなり絞り込まれてきました。スマホの世界では、AppStoreやGooglePlayでアプリをダウンロードし、そのアプリを開いて使うというのが共通意識で定着し始めています。この1年ぐらいの話ですね。

そういった定着したスタイルを把握したうえで、どういうものを作ればよいのか、何が競争力になるのかは、知り尽くしているつもりです。だから、一例を挙げるとIDやパスワードを使わせようなんて発想は、最初からありません。生き残っていくアプリは、ピカピカのクオリティでなければいけないし、中毒性や再訪性がないといけないと思うのです。多くの人にとって日常生活の一部となっているTwitterやFacebookを開くような感覚でAWAを開いてもらわないとダメ。これまでのノウハウを生かして、しっかりつくっていこうと思っています。

――最初の3カ月は無料ですが、有料になったとき、どのくらい離脱すると想定していますか?

そこはハッキリとはわかりませんね。私たちの感覚ではありますが、「有料アプリ」ではなく、まずは「ネットサービス」として使ってもらわないとはやらないでしょう。本当は半年無料にしたかったのですが、音楽業界は「無料」に対する抵抗感がものすごくあったのです。まず3カ月間は無料ですので、「無料のネットサービス」として多くの人に使ってもらい、便利だと思ったら課金してくださいという提案を今回はしていますが、何割ぐらいが定着するかっていうのは……。そこはまだわかりません。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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