なぜアップルはビーツを32億ドルで買うのか

ブランドパワー、音楽定額配信以外にも宝

ドクター・ドレとビーツのヘッドフォン(写真:ロイター/アフロ)

5月8日以降、アップルが32億ドルで「beats(ビーツ)」を買収するというニュースが伝わり、「アップルがいったいなぜ?」という声が多く聞かれた。beats Electronicsはヘッドフォンブランドとして近年急速に浸透した会社。筆者も、買収のニュースを聞いた段階では首を傾げたものだ。アップルはこれまで大型M&Aとは無縁で、自ら新事業を生み出すことで成長をしてきた。今回、ティム・クックCEOがこの路線を転換し、成長のための企業買収を行うにしても、なぜこの会社を選んだのか、納得できなかったからだ。

しかし、いくつかの切り口を個別にみると、beatsには単純なヘッドフォンメーカーとして価値以上の魅力があることは間違いない。

ヘッドフォンのトップ企業

まずヘッドフォンメーカーとしてのbeatsの実力をみてみよう。

同社は現在、ブランド別ヘッドフォンの販売シェアでは世界ナンバーワンと言われている。今や世界中で「偽物」が発生するほどの勢いだ。しかし、ヘッドフォン製品の技術面での評価は必ずしも素晴らしいものではない。

ヒップホップ音楽のアーティスト、プロデューサーとして知られるドクター・ドレが開発に加わったとされる「beats by Dr.Dre」が発売されたのは2008年のこと。当初はオーディオケーブルメーカーであるモンスターケーブルとの共同開発で始まったbeatsブランド最初の製品が、なぜか筆者の自宅に突如送られてきて驚いたことを思い出す。

デザイン性に優れたノイズキャンセリングヘッドフォンは、なかなか高級な作りと悪くない装着性や携帯性、それに意外にも素直なナチュラルチューンの製品だった。

ヒップホップ系プロデューサーが開発に加わった「beats」といういかにものブランド名から想像されるよりも、ずっと本格派の作りだったbeatsだが、その後は徐々に名前から想像されるような、低音を強調したアトラクティブな愉しませるサウンドへと変化していった。これは顧客層の好みを反映したものだったのだろう。

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