私の現場経験から②メンバーシップ型と人材流動性の低さ
近年、よく言われる「メンバーシップ型」と「ジョブ型」という対比がある。
メンバーシップ型では、企業集団の組織に入ってもらって、雑事や人間関係を含め仕事のスキルを磨いてもらう。ジョブ型では、個々人が仕事でなすべき目標と内容が規定され、ジョブディスクリプション(職務記述書)に従って仕事をする。
一般的には上記のように考えられている。そして、伝統的に「メンバーシップ型」である日本は、さまざまな判断に人間関係が影響してくる。それゆえに会議時間も長くなるし、根回しの必要性も生じると。
実際、どうなのだろうか。誤解がある、と私は感じる。
まず、メンバーシップ型について。なぜこれまで日本が採用していた年功序列で給与が上がるかと言うと、それはメンバーシップ型である以上、その組織で長く経験を積んだ人こそがスキルが高い、という論理的結論になるからだ。であれば年功の上位者は若者よりも、すべてスキルが高く、かつ意見を拝聴する対象になっていく。
一方、ジョブ型は、やや日本では極端に喧伝されている。実際に外資系の人々と話していると、曖昧なジョブディスクリプションも多い。だって、ビジネスでは何が起きるかわからないから、事前に仕事を完全に規定できるはずはない。
ジョブ型は清々しい、ゆえに日本で定着していない
むしろ、ジョブ型の肝要は、「こういう仕事できるなら、これだけ払いますよ」と値札をぶら下げる点にある。そして年長者が応募しても「あなたはこれを遂行できる能力がないので就けません」と説明する必要がある。この清々しさこそ、日本にジョブ型がさほど定着しない理由だ。
だから、日本企業はジョブ型を大胆に採用せず、メンバーシップ型にとどまる。さらに、人材が流動的であれば、そもそも根回しうんぬんの前に、固定したメンバーがいない。だから人間関係ではなく事実ベースで判断するしかない。
なお、もう一つの話として、「人材の流動性がないので、仕事を効率化しても、けっきょく人材数が減るわけではない」「だから、会議が長くても短くても人材コストは変わらない」「会議を短くするインセンティブがない」といった問題もあるだろう。
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