なぜ会議時間は長くなる?
ところで、私はコンサルタントという職業柄、さまざまな会社にお邪魔する。そして、サプライチェーンや調達部門の支援を専門にしているものだから、どの外部企業を採用するか決定会議の場に参加する場合が多い。
過去の経験を交えながら、「日本で、会議時間が長くなりがちな理由」を、3パターンから綴ってみたい。
私の現場経験から①なんとなく全員で決める文化
ある商品パッケージを決める際のことだ。取引先Aの案1、取引先Bの案2、取引先Cの案3……と次々に見せられたのだが、まったく違いがわからない。「正直、どれでもいいんじゃないですか」くらいしか思えない。しかし、会議の参加者はあれこれ注文をつけたり、ときにやり直しをお願いしたりする。
あとで、参加者に聞いてみると「実はそれほどわかんないけど、なんか言わなきゃいけないでしょ」と正直に教えてくれた。日本企業では一人の強い決定者が不在のケースが多い。なんとなく全員で意見を出し合って決める。だから、(とくに上位者は)参加した以上、なんかそれっぽいコメントを言わねばならない圧力を受ける。
以前、あるビジネスパーソンと話していると「上司に見せるときには、わざと一箇所のみ穴を作っておきます。すると、そこだけに指摘時間が費やされるから楽でしょ」といっていた。
ここまでくると、もはや策士というかハッカーである。
彼は「さらにいえば、指摘されても修正しなくてもいいですよ。何も修正せず同じ資料を見せても『前より良くなった』と上司が言う場合がありますから」と笑った。しかし、笑うところではなかったかもしれない。
ところで、「なんとなく全員で決める文化」は製造業の文化から来ている。ものづくりで品質改善を試みる場合は、たしかに全員参加主義がうまくいく。
この国では「俺は聞いてないぞ」が誰かの意見の反対表明として使われてきた。聞いていないことと、それが間違っていることは無関係のはずだが、全員参加主義ならば、全員に伝えていないほうが悪とされた。
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