人事が知らないとマズい「採用」より大切な仕事 採用の背景にある「人員計画」の策定の方法

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このようにして人件費予算を決めたうえで、「どの部署にどういう人を入れるのか」「何人必要なのか」といった議論から始まり、人員計画を作った結果、「人が足りない」となった場合に「それは他の部署から異動させられないのか」「派遣や業務委託じゃダメなのか」といった話し合いを踏まえたうえで、最終的に「採用」となるわけです。

人事担当者になる人は、こうした採用の背景を知っておかなくてはいけません。「いい人が来たから採用しましょう」という簡単な話ではないので、定員計画→要員計画→人員計画→異動計画→採用計画、この一連の流れは極めて重要な職務となります。

採用は、要員計画と人員計画の差異を埋める施策

定員計画、要員計画、人員計画、異動計画、採用計画、これらの計画を作るのは容易ではありません。定員計画で人件費予算を決めるときには、各部門別にヒアリングを行い、現在の人員状況を把握し、来期に向けて増員が必要なのか、減員できるのかを確認していく必要があります。これは当然「聞くだけ」では済みません。

現場は「人が足りない」と言うでしょうし、経営は「人を減らせ」と言ったりします。両者の要望に挟まれながら、調整と交渉を繰り返していきます。そうして「定員計画」や「要員計画」を立て、「人員計画」で実際に人員を配置していくわけですが、ここでも多くの要望に対する調整や交渉、ときには粘り強い説得も必要になります。

現場のリーダーは、優秀な人材は手放したくありませんし、そうでない人材は他部署への異動を願ったりします。一方、自ら異動を希望する社員もいます。たとえ本人が望まなくても、さまざまな部署を経験させることが必要だったりもします。全国展開の会社だったら、転勤させる場合には家庭の事情を考慮する必要もあるでしょう。

現場の要望はもちろんですが、「この人はこういうキャリアで成長させるべきだ」「この人がもっと活躍できる場はないか」といった人事側の想いも大切になります。人事担当者は、さまざまな要望や個別の事情、自身の想いなどを反映しながら調整と交渉、説得を繰り返して、配置や異動、採用の計画を立てていくのです。

3月決算の会社であれば、11月頃から人事担当者が各部門にヒアリングを行い、来期に向けての状況を確認していきます。併せてメンバーの来期以降の育成方針や異動方針、あるいは課題などを聞きます。各部門の来期予算の提出は、年内12月頃までが多いでしょう。

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