WRC6連覇の伝説を残した「ランチアの雄」デルタ モータースポーツの活躍で根強いファンを獲得

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インテグラーレHFの登場は、1987年。開発の目的は、ずばりWRCでの優勝を狙うこと。1986年に実戦投入され、1987年にマニュファクチャラーとドライバー、2つの選手権を獲得したデルタHF 4WDをさらに高性能化したモデルだった。

WRCでのデルタHFインテグラーレはマルティ二カラーも特徴的だった(写真:Stellantis)
WRCでのデルタHFインテグラーレはマルティ二カラーも特徴的だった(写真:Stellantis)

はたして、デルタHF 4WDと、1988年からのデルタHFインテグラーレは、世界ラリー選手権(WRC)において、1987年から1989年まで3回のドライバー選手権、1987年から1992年まで連続して6回のマニュファクチャラー選手権とドライバー選手権を獲得したのである。

進化を重ね「エボルツィオーネ2」へ

1987年に一般向けに発売されたデルタHFインテグラーレ。1986年には「デルタHFインテグラーレ16V」、1991年には「デルタHFインテグラーレ16Vエボルツィオーネ」、1993年には「デルタHFインテグラーレ16Vエボルツィオーネ2」へと“進化”していった。

エボルツィオーネ世代になるとオーバーフェンダーはさらに拡幅され迫力が増す(写真:Stellantis)
エボルツィオーネ世代になるとオーバーフェンダーはさらに拡幅され迫力が増す(写真:Stellantis)

いずれも、中古市場での人気は今も非常に高い。深いエアダム、ブリスターフェンダー、リアスポイラー、大径ホイール、それにラリーテイストむんむんのインテリア……と、パーパスビルトな雰囲気は、ほかに代えがたいものがあるからだろう。

「このクルマはホモロゲーション(ラリー出走資格)モデルなので、3万キロもてばよい」。かつてランチアの技術者は、HFインテグラーレのビルトクオリティについて、そう語っていた。

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「3万キロ」を超えても高い人気を維持し続けるデルタHFインテグラーレ。ランチアというブランドはこのところ風前の灯火だったが、スポーティなBEV(バッテリー駆動EV)ブランドとしてのリバイバルが画策されている模様で、さきごろ新型「イプシロン」が発表された。

モータースポーツでの勝利を目指しての投資は、当時かなり高くついたんじゃないかと思うけれど、このように見返りもまた大きかったというべきだろう。ここが、自動車メーカーがモータースポーツ活動に熱心な理由なのだ。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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