そんなランチアのブランドイメージをうまく生かしたのが「デルタHF」であり、「デルタHFインテグラーレ」だ。
親会社のフィアットは、先だって1971年にフィアット・アバルト「124ラリー」、1976年に「131アバルトラリー」といったラリーカーを開発したが、124は2座スポーツカーだし、131はモータースポーツイメージとかけ離れたセダンだった。成長する(当時の)若者市場にアピールするならハッチバック、と考えても不思議ではない。
そこで焦点が当てられたのが、フォルクスワーゲン「ゴルフ」の対抗馬として開発され、1979年に発売されたハッチバック、ランチア「デルタ」。
全長3885mmの4ドアハッチバックボディを、2475mmのホイールベースをもつシャシーに載せたコンパクトモデルだ。私は1.6リッターエンジンの標準モデルに乗ったことがあるが、すばらしいコーナリング性能を発揮してくれるクルマだったことを鮮明に覚えている。
ゴルフGTIにならって高性能化
ホットハッチなどと呼ばれる高性能ハッチバックの人気はヨーロッパではずっと高く、ランチアでもゴルフGTIが開拓した市場に向けて、デルタを高性能化した「HF」や「HFターボ」を追加。さらに、「デルタHF 4WD」を開発してWRCを走らせた。
ランチアは1960年代からラリー活動に熱心で、「フルビアクーペHF」(1965年)をはじめ、「ストラトスHF」(1973年)や「ラリー037」(1982年)で好成績をおさめてきた。
車名に出てくる「HF」は、オーディオファンならおなじみ「ハイフィデリティ(ハイファイ)」の意。オーディオの世界では高忠実度などと言われるが、ランチアではドライバーの意のままに忠実に走る(高レスポンス)マシンとして、モータースポーツでも使える高性能車を意味している。
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