医師が「がん患者」になってわかった頼れる情報源 科学的根拠のない話に惑わされないために

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そして私が甲状腺がんの項目で最も気になったのが、術後に生じるかもしれないと記載のあった、反回神経麻痺でした。甲状腺の近くには、反回神経という発声や物の飲み込みに関わる神経が走っています。

手術でどうしてもこの神経が傷つくことがあり、そうなると声を出しにくくなったり、飲食でムセやすくなったりする合併症が生じるのです。こちらも事前に情報をチェックしていたことで診察のときに主治医の先生に気になる点を念入りに確認できました。

科学的根拠に基づいたものだけが記載されている

緩和ケア医師ががん患者になってわかった 「生きる」ためのがんとの付き合い方
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私はこういった情報をがん情報サービスで得ることで、想定される治療期間を理解でき、仕事をどれくらい休めばよいのかといった準備がしやすくなりました。また、治療後に生じる合併症などの情報により、生活への影響もイメージすることができ、正しい情報が身を助けてくれたと実感しています。

がん情報サービスにはあらゆる種類のがんに関して、患者さんが知っておくべき基本的な情報が網羅されています。こちらの内容はすべて科学的根拠に基づいたものだけが記載されており、基本的には誤りはありません。

まずは、すべての患者さんがこちらの情報を確認するべきだと、私の経験則から強くお伝えしたいです。

廣橋 猛 永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長、緩和ケア病棟長

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ひろはし たけし / Takeshi Hirohashi

2005年、東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、09年、緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。14年から現職。病棟、在宅と二つの場で切れ目なく緩和医療を実践する「二刀流」緩和ケア医として、これまで3000人以上の患者の死に関わる。2023年に甲状腺がんに罹患していることが判明し、現在は闘病しながら緩和ケア医としての活動を行う。著書に『がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」』(KADOKAWA)『素敵なご臨終 後悔しない、大切な人の送りかた』(PHP研究所)がある。

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