「タイパ重視」を習慣にするZ世代の超意外な盲点 30代上場企業役員があえて小説を書く理由

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本を読む少年
「人生単位のタイム・パフォーマンスではいい結果が出ると信じることができるのは、今まで読んできたたくさんの小説のおかげだ」(写真:metamorworks/PIXTA)
Z世代を中心に「タイパ」を重視する人が増えている。『ファラオの密室』で2024年「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した白川尚史氏は、「タイム・パフォーマンス、大いに結構である。一方で、それを追求したところで本当に幸せなのか、という疑問は拭えない」という。上場企業役員という多忙な仕事をこなしながら、一作に何百時間もかかる小説を書く白川氏に、その言葉の真意を語ってもらった。

割り算の分母となる時間の幅が短すぎる

タイパという言葉をご存知だろうか。簡単に説明すると、タイパとはタイム・パフォーマンスの略だ。ある効用、または満足感を得るにあたって、犠牲にする時間あたりの効率を指す。昨今ではZ世代の価値観を表す語として象徴的に使われている。

似た言葉として、コスト・パフォーマンスという言葉が以前から使われている。これは主に金銭的なコスト効率のことだ。お金は稼げば増えるが、時間は(今のところ)どうあがいても増やすことができない。何かを得るにあたって、お金より時間の効率に注目し始めたということは、より貴重な資源に目を向けるようになったという意味で、人類史においてむしろ歓迎すべきことのようにも思える。

タイム・パフォーマンス、大いに結構である。一方で、それを追求したところで本当に幸せなのか、という疑問は拭えない。特に注目すべきは、パフォーマンス評価をするときの時間のウィンドウサイズ、つまり割り算の分母となる時間の幅が短すぎることである。

例を挙げよう。5分間の面白いジョーク動画を見たり、10分にまとめられた映画を見たり、VTuberのゲーム実況を見たりしたとして、10分単位の満足度で評価すれば、なるほど確かにほとんどの映画にタイパでは勝っているかもしれない。特に、オチが好みではない映画相手なら圧勝といっていい。しかし、人生で数本レベルに気に入る映画、すなわち120分かけて見たとき、ゲーム実況の12倍以上感動する映画は必ず存在するだろう。

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