こうした人たちもいるということを少しでも考慮したなら、コロナ禍での注意喚起の呼びかけは、別のわかりやすい日本語での訴え方もあったのではないかと思ってしまいます。
「国のトップの言葉」も届いているのやら…
ついでに、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「2類」から「5類」に移行した際、東京都が打ち出したのは、「サスティナブル・リカバリー」というカタカナ標語。
これをいったいどれだけの人が理解できたのでしょうか……。
岸田首相は、先の国会で、「経済こそが一丁目一番地」であり、「物価などの課題に不撓不屈(ふとうふくつ)の覚悟をもって取り組む」と述べました。
そして、衆院解散・総選挙を見送る表明をした記者会見では「先送りできない課題に一意専心(いちいせんしん)取り組んでいく」と。
それぞれの意味は――、
●「不撓不屈」・・・強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけないこと
●「一意専心」・・・他に心を動かされず、一つのことに心を集中させること
ちなみに「不撓不屈」というのは、1993年、人気相撲力士だった貴乃花が大関昇進時の口上(口頭で気持ちを伝えること)で使い、脚光を浴びた言葉で、さらには「一意専心」も兄の若乃花が大関昇進時の口上に使用した言葉です。
内閣支持率低迷にかこつけて、「若貴の強さと人気にあやかったか」と皮肉ったマスコミもありましたが、そもそも30年前の話を、今の若者たちが知る由もありません。
これら難しい言葉の意味をスラスラ言える若者がいるならお目にかかりたいくらいです。
誰に向かって言葉を発しているのか、誰の胸に届けようとしているのか――。
言葉というものは、伝わらなければ、意味をなさないのです。
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