先に述べたとおり、さまざまな思惑が市場で浮上する中で、日本銀行は市場に過度な期待や失望させず、単月のCPIの動きを重視しない考えを市場に伝えた。同時に追加金融緩和がなくても、2%インフレ実現へのコミットメントは揺るがないことを強調することで、金融緩和が長期化するとの期待を強め、金融緩和効果を高めることに成功したということだ。
そして、市場の日本銀行への信認の高まったことには、黒田総裁などの揺るがない姿勢に加えて、3月2日のコラム「今の日本株は『バブルの再来』ではない」でも指摘した通り、安倍政権が日本銀行の体制変化を促す審議委員人事を実現した影響も無視できないだろう。
金融緩和をしなくても、ドル高期待が高まりやすい
今後、米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ開始のタイミングがいつ始まるかは不確定である。だが、最近の米国の雇用関連指標のしっかりとした動きを踏まえると、年内後半のいずれかの時期にFRBは利上げを始める可能性が高まっている。
仮に日本銀行が追加金融緩和を発動しなくても、為替市場においてはドル高期待が高まりやすい。そうであれば、金融緩和長期化の期待を保つことで、景気刺激効果が期待できる状況にある。
為替市場でドル円が1ドル125円台まで動いた5月末は、米国債券市場においてFRBによる金融緩和期待が強まらず、米国金利は低下していた。そうした中で起きたドル高は、為替市場が、その後の米国の金利上昇を先読みして動いたかもしれないが、ドル円市場のすう勢を決める「FRB利上げ、日銀緩和継続」という金融政策の方向の差が、ドル円を再び押し上げた側面もある。
6月になってから、欧州債券市場での金利の不安定な動きが、米欧株の上値を抑え、これが日本株市場にも波及して、6月になって日経平均もやや調整気味で推移している。
ただ、米欧の中央銀行との相対感でいえば、日本の金融緩和が長期化する期待は揺るがないだろう。ぶれない日本銀行の金融緩和継続に対する姿勢が、2015年後半も日本の株式市場を支えると考える。
なお、6月10日に、黒田総裁が「(実質実効レートで」さらなる円安はありそうにない」と言及して、円高に振れる場面があった。この発言を「円安を止める口先介入の始まり」とする見方もある。だが、金融緩和を長期化する中では、今後も円安基調が変わる可能性は低いだろう。
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