ダイソー、「120円ショップ」にはならない深い戦略 都心で大量出店、「300円業態」生みの苦しみ

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――国内は、どのくらいの出店余地がありますか? 既存店と競合しないでしょうか。

現在の4360店(うちダイソーは3813店)から、2026年までに5500店まで増やしていく。首都圏や食品スーパー内の出店を考えている。都心部の損益分岐点はかなり高いが、80坪くらいの店を青物横丁(品川区)や人形町(中央区)など(立地を)見極めて出店している。300坪あれば、ダイソーとスタンダードプロダクツのセットで出店できる。

足元の既存店はプラスで推移している。背景には、インバウンドや節約志向といった追い風がある。とはいえ円安対応の値上げが遅れて粗利が下がっているので、今まさに1ドル150円想定で商品の量目変更や価格帯の見直しを進めている。物流費も含め、全体のコストや生産性を徹底的に見直しているところだ。

――2030年までに売上高1兆円目標を掲げています。

アメリカでの成長次第だ。現在の海外売上高比率は7%で、これを30%くらいに広げたい。約315億円を投じて、マレーシアに大型の物流センターを建設中だ。国内も大型物流センターを増やしており、8拠点では足りず昨年7月に神奈川県平塚市に新設した。アメリカの出店が落ち着いてきたら、ヨーロッパへの展開も考えたい。

100円の価値は上がっている

――矢野社長から見て、この30年で100円の価値は変わりましたか?

19歳から家業を手伝ってきた。30年前と比べて変わらないものもあるが、品ぞろえを含めてよくなっている。つまり100円で提供できるものの価値は、30年間で上がっている。

バイイングパワーが大きくなったうえ、2018年に品質管理部を作った成果でもある。少なくとも昔の100均には、品質管理という概念がなかった。

だが海外進出もしているし、かつてマニキュアから(発がん性物質の)ホルムアルデヒドが検出される問題も起きた(2015年に販売中止し商品回収)。雪印乳業の賞味期限偽装事件があった当時、私はスーパーで担当バイヤーをしており会社が潰れるところを見てきた。そうした経験もあって品質管理部を立ち上げ、仕入れ先と共有するようになった。

――定番品を中心にSPA(製造小売り)化は検討していますか?

自社工場がタイとベトナムにあるが、仕入れ額は100億円程度と全体に占める割合はごくわずかだ。取引先が困るため明言は難しいが、将来的に定番品に関しては(SPAへ)持っていこうかなと思っている。今は店舗が増えてキャパオーバーにならないよう、物流の対応を進めていきたい。

【矢野靖二社長のプロフィール】やの・せいじ/1971年広島県生まれ、1995年吉備国際大学社会学部卒業後、イズミ入社。2015年大創産業入社。取締役、副社長を経て2018年3月より現職。
前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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