総務省初の"出戻り官僚"が誕生、霞が関の危機感 キャリアの退職相次ぎ、人事改革に試行錯誤
なぜ、官僚は霞が関を去るのか。内閣人事局のアンケートでは、30歳未満・30代の男女いずれにおいても、離職意向の要因として「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたいから」という回答が4割超と最多だった。30歳未満の男性は「収入が少ないから」も、42.4%と高かった。
総合職として新卒で入っても、「定年まで公務員を続けたい」と希望する職員が5割未満にとどまるとのデータもある。公務員でも終身雇用を前提とせず、キャリアアップを意識しながら働く若手が多いことがうかがわれる。
志望者自体も昔より減っている。2012年度に2万5110人だった国家公務員総合職試験の申込者数は、2022年度には約27%減の1万8295人まで落ち込んだ。人事院の学生向け調査では、国家公務員を回避する理由として、試験の勉強・準備を除けば、「業務内容をこなすことが大変そう」「業務内容に魅力を感じなかった」などの回答が目立つ。
年次ではなく能力でのフェアな評価が必要
「ブラック霞が関」という言葉に代表されるように、長時間労働などネガティブイメージが定着し、学生にとって職業としての官僚の魅力度は低下している。安倍政権以降は官邸主導が強まり、森友学園や加計学園問題など官僚の「忖度」が問われるスキャンダルが発生し、役人が矢面に立つ場面も目立った。そうした問題も、若者を霞が関から遠ざける要因になっているのかもしれない。
官僚を取り巻く環境の変化に、霞が関も人事改革を迫られている。人事院は2023年9月に有識者会議を設置し、人材確保などさまざまな観点から国家公務員人事のあり方の議論が進む。今秋にもまとまる提言の内容を踏まえ、人事院は人事管理の「抜本的アップグレードを実行する」方針だ。
出戻り官僚で構成する「リボルバーの会」の事務局を務め、官民共創に取り組む元経産官僚の栫井誠一郎氏は、ダイバーシティも意識した人事制度への転換が必要だと指摘する。
「官民を行ったり来たりできる世の中がよいという時代に変わっているけれど、これまで組織がなかなか追いついていなかった。年功序列、終身雇用だと年次で判断しがちになるが、元官僚、民間経験あるなしに関係なく、政策分野でどんな能力を持つかフェアに評価することが大切だ」(栫井氏)
押し寄せる大きな変化の波にさらされる霞が関。多様な人材が能力を発揮できる職場に変われるのか。従来の慣例から抜け出そうとする試みはまだ始まったばかりだ。
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